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昨日の今日で頭の整理なんてまともに出来ないまま、部活は休日にも関わらずいつも通り行われる。
それなのに、昼メシ買い忘れた、だとかどうでもいいことを考えてしまうくらい練習に身が入らない。
「高尾!」
「っ?!……すんません!」
「ボケッとしてんじゃねぇよ!轢くぞ!!」
あー、最悪。
ファンブルするわ、宮地さんに怒鳴られるわ……まあ、自業自得か。
さっきから昨日の葉月さんの表情とか、オレの名前を呼んでくれた声とかが頭ん中をぐるぐるぐるぐるエンドレス状態。
「そろそろ昼飯にするか。高尾、午後は外周行ってこい」
「はい」
「全く、ゲーム中にぼんやりするなど考えられないのだよ」
「高尾ー、次やったらマジで刺すから」
呆れた表情の大坪さんにも、眼鏡のブリッジを上げながら吐き捨てる真ちゃんにも、笑顔で毒を吐く宮地さんにも何も言い返せない。
全部切り替えが上手く出来ないオレのせいだから。
気持ちのコントロールは下手じゃないはずなんだけど、どんだけ女々しいんだよオレ。
「和成くん」
ほら幻聴まで聞こえて……って、あれ?
「あれは、」
「葉月?」
ヘコむオレの背中から突然聞こえてきた声。
振り返れば、体育館の入口にここにいるはずのない人物がいて驚く。
そして、宮地さんのオレ以上に驚いた顔が気になった。
「どう、したんすか?」
「あの……和成くんはいつも買い弁だって和幸さんに聞いて。それで、」
「弁当、作ってきてくれたんすか?」
「うん。良かったら……」
「マジで?!ちょー嬉しいっす!!大事にいただきますね」
「え、うん。喜んでもらえたなら良かった」
差し出されたシンプルな包みの弁当箱と、葉月さんのはにかんだ笑顔。
やべー、オレ午後の外周とか余裕で頑張れちゃうわ。
なんて、調子に乗っていたからだろうか。
「葉月、ちょっと来い」
「えっ?!宮地?」
「いいから」
「ちょっ、痛いよ。わかったから」
後ろから伸びてきた手が葉月さんの細い手首を掴み、ずるずると体育館の外へ連れ出した。
あまりに突然で、だけども自然で、オレは立ち尽くすことしか出来なかった。
―大坪ー、オレも午後外周でいいわ。
そんな、バスケ好きな宮地さんらしからぬ声が聞こえるまで。
「なあ、大坪。お前気付いたか」
「いやいつも通りだと思ったが。むしろ気付けるのは宮地くらいだろう」
「それもそうだな」
大坪さんと木村さんの話し声に、やっぱり宮地さんは葉月さんのトクベツなんだろうな、って思った。
オレがいくら願ったって辿り着けないその場所にいるあの人が、羨ましくて憎い。
「とりあえず、朝倉は宮地に任せよう」
「ああ。高尾、メシにすんぞー」
「っ……はーい」
(二人はどんな関係なんですか)(なんてわかりきったこと)(臆病なオレには聞けなかった)