名探偵コナン

□翻弄
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「っ……??」

気がつくと、外は雨が降っている。
あたりを見回してみるもそこは自分の知っている景色なんかではなく、見知らぬ景色で。
どうしてここにいたんだっけ?なんて考えてみるものの、思い当たることは何一つとしてなかった。
それどころか、自分の名前ですら思い出せないのだ。

記憶喪失。

そんなことは簡単に理解ができたのだが、どうしてこうも冷静に考えられるのだろう。
うーんと頭を抱えてみるも、こんなことをしていては家にも帰れないし、わたしの体に打ち付けられる雨だってしのげやしない。
ひとまず、なんとかしなければいけない。
手に持っていた鞄を開けて財布が入っているのを確認して、すぐそこに合った喫茶店へ足を運ぶ。

カランコロン。


「いらっしゃいませ」

目の前に現れたのは、青い透き通った目をして、クリーム色の髪を揺らし、褐色の肌のイケメンさん。
なんだろう、どこかで見たことある気がするんだけど……?
そんなふうに、ぼぅっと眺めていると、向こうは首をかしげた。

「どうか、しましたか?」
「ぁ、いえすみません、ちょっと考え事を」
「…そうですか、お席、ご案内しますね」

イケメンな店員は、空いてる席へと案内すると、メニューを広げる。

「今、こちらのケーキセットがおすすめとなっておりますが…」
「じゃ、それで、飲み物はホットコーヒー」

こんなイケメンが進める商品だ。
誰もがこんな笑顔で勧められたら断れたものじゃないと思う。
さっとメニューを下げた彼を見送ると、カバンの中に何か身分の入っているものがないかとさがしみてみる。

出てきたのは、スマートフォン。
なんだ、こんなものがあるじゃない。
bourbonと書いたケースに入ったスマホの画面を立ち上げてみる。
見慣れた青い鳥のアプリがあったのでそれを開き、全てのアカウントを調べた。

「茶裏…おもて…?」

きっと、これがわたしの名前なのだろう。
画像欄、つながりのある人、全て見てみても他にめぼしい情報は見つからなかった。
それどころか、自分は何も発言していないし、フォローしている人も、フォローしてくれている人もいない。
…友達、いなかったのかな。

なんて思いながら、次に連絡先を開く。
中には、誰も登録されてなくて、寒気がした。
もちろん自分の情報も無ければ、着信履歴、メールの送受信だって見つからない。

なんていうことだ。
絶望という文字が頭の中へ浮かぶと、この先どうにかしないと、という思いに検索エンジンを開く。

そこには、
安室透 画像 バーボン 画像 降谷零 画像
といった文字が並んでいる。
なぜそこだけ残っていたのか、全く分からず、ひとまず一番上に残っていた履歴をタップしてみた。

検索情報はありません。

どうしよう。
いよいよ謎なんだけど。
はあ、とため息をついたところで、声がかかった。

「……お待たせいたしました。」

どうやら頼んでいたものが来たようで、それを受け取り、お辞儀をする。
そうしたら、なかなか立ち去らない店員さん。

…首をかしげながら、彼をじっと見ると、心なしか、眉間に皺を寄せているような気がした。

「……何か?」

先に口を割ったのは彼だ。
その台詞は私が言いたかったものと全く同じで、頭に?マークが浮かぶ。

「いや、何かって、こちらの台詞なのですが……私に、なにか?」

訝しげな表情をしてやれば、向こうはすこし驚いたような顔をしていた。






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