名探偵コナン

□瞳の中に
1ページ/1ページ


私は知ってる。
私を抱く彼の瞳に、私は写ってなどいない事を。
ベットの下の長い髪も、お風呂場に忘れられた片側のピアスも、
身に覚えのない貴方についた痕も、本当は、全部、全部わかっている。


「何を考えているんです?」


安室さんは、私に跨り問いかける。
行為が終わりひとときの安らぎの時間。
いつだって彼は私に口付けをしなかった。


「……あむろ、さんのこと…?」


何もかも見透かされているようで、その瞳を直視することができず、視線逸らす。
その間際、彼の口角が上がったような気がした。


「なかなか可愛らしい事を仰るんですね。」

「そんな大層な事でもありませんけど。」


私の首元に顔を埋めると、冷たい感覚が首筋を這う。
くすぐったいような、なんとも言えない感覚に身を捩らせると、彼の手が私の腕を掴んだ。


「……変態。」

「とんでもない、なつめが可愛すぎるだけですよ。」


終わってからそう大した時間は経ってない筈なのに、元気な事。
主張してくふ膨らみを撫でてみる。
ちらりと彼を見れば、犬みたいな顔をしてじっとこちらを見つめていた。


「ねぇ、だめですか?」
「………だめ。」


ふいっと首を振れば、驚いたようにこちらを見られる。
意を決して、彼の瞳を真っ直ぐ見つめてみた。
貴方を、心から愛している、そんな風に思いながら。


「………。」


安室さんの、目が泳ぐ。
しばらく交わらない視線。
彼は、何を考えているのだろう?


「安室さん、」
「は、い…?」


俯く彼の唇に、そっと自分のそれをくっつける。
普段は絶対拒否、というかさりげなくかわされるそれは、今日は簡単に奪う事ができた。
目を見開く彼の唇を離さないまま、しばらく時が流れる。

舌を入れるでもなく、かといって舐めるでもなく、ただくっつけているだけのキス。

固まってしまっている彼の肩をそっと押して、それを終わらせた。


「あの、」
「……なんでしょう?」


しどろもどろ、と彼らしくない反応。
震える手が、私の腰にまわった。


「ぇ、と…」
「…すみません、らしくなくて。」


そのまま引き寄せられ、今度は安室さんが、私の唇を奪った。
何度か触れては離れ、次第に腰にかかる力が強くなり、片方の手で自分の腕を取られる。
強く握られる手も、唇もまた震えていて、なんだかとても、どきりと胸がなった。


「あ、むろ…さ、」
「…ちょっと、このまま………」


惜しくも離されてしまい、彼の瞳を覗こうとすれば、視界は暗くなる。
彼の腕の中に収められ、しんとした空気が心地よかった。


「…らしくない、」
「……ごもっともです…」


彼を剥がし、今度こそと瞳を見れば、そこには、確かに私が写っていた。


「安室さん、」
「…なんでしょう?」
「好きです」
「………はい。」


布団にくるまり、返事を聞く前に音を遮断しようとした時、
僕もです、と、聞こえた気がした。










[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ