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□第2章
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「同じ赤でも、フィーの美しさには及ばないさ。ねぇ、私の深紅の君…」
ダウルがフィネージュの髪を梳きながら、彼女の目をまっすぐ見つめ、甘く囁く。
「……嬉しいっ!」
ダウルっ!――フィネージュがまたダウルに勢いよく抱き着いた。
この2人はドラゴンとライダーでありながら、愛し合っているのだ。これまで例がなかったわけではないが、珍しいことである。
「…グウェン、バカップルはほっといて部屋に帰ろ。」
2人の世界にはついていけないわ…
エナはため息をつきながら、眠そうなグウェンジーガを連れて部屋を出ていった。
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「はやくデルに帰りたいな…」
廊下からレイエ河を眺めながらエナが呟く。
「ここにいたくないの…?」
グウェンジーガがトロンとした瞳で問い掛けた。
「そうじゃなくて…、セルア様とか、ミルチア様とか、みんなに会いたいの」
もう2ヶ月は会ってないしね――とエナは弱々しく笑う。
「……………」
グウェンジーガがエナの頭に手を置き、やさしく撫ではじめた。
「ちょっ…ちょっと、グウェン?」
いつもならこんなこと――とエナは少し驚き、グウェンジーガを見上げた。
「…すぐに帰れるよ」
大丈夫――とグウェンジーガは穏やかに微笑んだ。
「…うん、そうだね」
エナもつられて微笑む。
優しい子。この優しさが私は大好きなの…
じゃあ、帰ろっか―――とエナは部屋へと歩きだした。
グウェンジーガは窓越しにレイエ河を眺める。先程までのとろんとした瞳とは違う、鋭さを含む瞳だった。
――最近増えたドラゴンの飛来
一体何が起きようと――…?
グウェン?と廊下の先から大切なエナの呼ぶ声が聞こえた。グウェンジーガは考えを止め、彼女の元へと歩きだした――…
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