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□第1章
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「オレにやらせればいいものを…」
シイグは肩を竦めた。
いいの――とセルアは首を横に振った。
「これのおかげで私の視野が広がったし、ちょっと感謝してるの」
まぁ量は考えてほしいんだけどね――とセルアは笑う。
聖女じゃねぇんだから…とため息をつく。
「そうだろ? やっぱりオレの"娘"は違うねぇ。なぁ、息子よ。」
突然聞こえた声に驚き、2人は声のした方を振り返る。
扉にもたれていたのは、セルアに仕事を押し付けた張本人―――…
「親父!」
「オイデン様!」
シイグの父、オイデン。
「いつか分かってくれるとは思ってたが……うれしいねぇ」
うんうんとうなづきながら先程の"娘"の言葉を喜んでいた。
「でもオイデン様、いくら私のためとは―――」
「こら、オレのことはお父さんと呼べって言ってるだろ?」
「いやです。恥ずかしい。」
セルアに即座に拒否され、ショックを受けたが、めげずに続けた。
「セルアちゃん、そんなこと言わず―――」
「ラザル ここに親父いるぞー」
シイグは"仕事中"のセルアに絡む父の言葉を遮り、彼を血眼になって探しているであろう人を呼んだ。
その直後、
オイデンの後ろの廊下から真っ黒なオーラがたちこみはじめ、その中から怒りのこもった声が聞こえた。
「――…オイデン?」
呼ばれた彼はゆっくりと後ろを振り返る。