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□第2章
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―ネダリア・国境レイエ河
1人の青年が河の向こう、ザーフェスを注意深く見つめていた。
その目に空を漂う1つの影が入り込む。
――あれはドラゴンだ…
「――…兄さん」
「…あぁ。また来たみたいだ」
――2、3週間ほど前から国境のザーフェス側でドラゴンが頻繁に現れるようになっていた。
「…最近現れる間隔が短くなってない?」
変ね―――…と声をかけた女性・エナが首を傾げる。
エナと、その兄ダウルは国境警備部隊の一員としてレイエ河の監視を任されていた。
「確かにな。ここ3日で先週の倍は来ている。」
ダウルは空を漂うドラゴンを見つめる。
漂うだけで、こちらに向かってくることはない。
目的が分からず、もやもやしてくる。
「…ネダリアに侵入するつもりかな…………」
エナもそのドラゴンを見上げた。
そのドラゴンはふいにザーフェスの方へと身体を向け、飛び去ってゆく。
「どうだろうな…」
ダウルは視線をドラゴンから外し、ザーフェスの荒れ果てた平原を見つめた。
「…でも何かを企んでるのは確かだろう」
ドラゴンの姿が見える度に、不安は大きくなってきている。
一体何が起こるのだろう
やはり戦いか―――――…
ダウルの中の不安が少しずつ育ってゆく。
「ダウルぅ。ただいまぁ♡」
突如後ろから甘ったるい声が聞こえた。