rally game.04

□lächelndes Gesicht
1ページ/1ページ

lächelndes Gesicht = 笑顔

「……?」



最終下校間近

明かりの消えた暗い校舎をまだ生徒が残っていないかと点検に回ると
体育館から物音と明かりが漏れていた


一体誰がこんな時間まで……

そう荒木は体育館の重たい扉を開くと、そこには自分の教え子が1人



「あ、監督…」

「氷室か…?今何時だと思ってる」

「すみません」



今片付けてますから……

と、氷室は苦笑してガラガラとボールの入ったカゴを押し
体育館倉庫へと入る


それからカゴの鍵、倉庫の鍵とをしっかりとしめると
まだ“男子バスケ部監督”である荒木は体育館出入り口付近でこちらを見ていた



「今日の点検当番は私なんだ。早くしてくれ」

「この後何か用事でもあるんですか…?」

「早く帰りたい気持ちがわからんか…」



問いを1つ投げたのだが、さっさと仕事を終わらせ帰りたい荒木は
急ごうとしない氷室に苛立ちを覚えつつ、イライラして

反対に氷室はというとそんな彼女に申し訳なさそうな声音で話すも
なかなか、やはり急ごうという気は感じられない



「お前、いつもこんな時間まで練習してたか…?居残り練習するようなタイプじゃないだろ」

「最近はこの時間までやってますよ、試合もそろそろ近いし…」

「…まぁ、練習熱心な選手は確かに感心に値するが…」

「……“するが”…何です…」



何ですか?と聞きながら鞄を肩に掛けてようやく体育館を出ようと
そこに立っていた荒木とすれ違うとジロリと睨まれて思わず首を竦めた



「時間を守らんヤツは嫌いだ」

「…すみません……」



アハハ…、とまた笑って誤魔化せばまた何か言われるかもしれないと覚悟していた

しかし、荒木はハァ…と呆れた風にため息をつくだけで
直ぐに体育館の鍵を閉めた


それからは2人並んで足を進めていき職員室に立ち寄って鍵を片し
昇降口へと下りる

と、下駄箱から靴を出して履き替えた所で
氷室は

「でも、」

と唐突に切り出した



「ん?」

「この時間まで残っていないと、監督と2人で話せませんし」

「……2人で?」

「はい。」

「…………全く…」



ニコリと笑って頷いた氷室だったが、そんな彼を見て荒木は眉間にシワを寄せた



「寮生は早く帰れ、消灯時間があるだろ」

「え、ノーリアクション……」

「あ?」

「あ、何でもないです…」



実に淡白に、冷たい反応しかもらえず
何かマズいことでも口走ってしまったか…?
と首を傾げながらも、まだ明かりのついている寮を眺めて

後ろ髪を引かれながらも、では…。と小さく挨拶をした


あぁ。とまた荒木も小さく返事をして踵を返し
その場からもうすぐにでも去ろうとするが


「あの、」


とまた遠慮がちな声が耳に入る


そんな声を出すなら話しかけるな…、と訴えるような雰囲気で振り返ってみれば

また氷室は苦笑を浮かべていた



「だから何だ」

「いえ…あの………」

「はっきりしろ、私だって暇じゃない」

「…今度、プレーの指導をお願いしたい…なんて……」



ダメですか?というその問いに、彼女は一度目を丸くした

だが、自分の車のドアに手をかけて
あたかも何もなかったかのような調子ですぐに


口角を上げて、少し小馬鹿にしたように返答する



「それは何の口実だ?」

「………、別に。ただの練習としてです」

「そうか…まぁ、」



考えておいてやる





微笑みに企みを
に妥協を





「ねー室ちん」

「な、何だ……?」

「何でまさ子ちんに扱(シゴ)かれてんのー?」

「……そうだな…んー…」

「?」

「ちょっと注文を間違えた…ってところかな……ハハ…」

2012/05/22


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ