――あの子はまだ、私との約束を覚えているのだろうか。
『ぼくね、おおきくなってつよくなれたら、れんかちゃんのおむこさんになりたい!』
『じゃあ、わたしはキミのおよめさん?』
『ふたりでずっとなかよくいっしょにすごそうね。だから・・いまはお別れ・・』
『わたし、きっとかえってくる。しょうがくせいになって、ちゅうがくせいになって、もっとおおきくなったらきっとかえってくるよ。』
『うん、まってるよ。ずっとずっと。』
『――――さようなら。』
ふと変な夢を見て目が覚める。
「ここは………」
流れるように進んでいく風景。
都会の建物だらけの街から、小さいころによく見た自然豊かな風景が広がっている。
「あら、まだ寝てなさい恋花。晴南市にはもう少しかかるわよ?」
車を運転する母とミラー越しに目が合う。
「なんだか懐かしい夢を見ちゃって…」
「懐かしい?小さいころのかしら?ということは輝の夢でも見たの?」
「…わかんない。」
夢の相手が誰だったかなんてわからない。
思い浮かぶのは華奢な後ろ姿と、なんとなく儚げで弱弱しい子供の姿だけ。
―――――覚えてないよね、きっと。
「それにしても、高校の受験先が晴南市の三雲学園だなんて驚いたわ、あなた小さい頃最後まで引っ越しを嫌がってたものね」
「約束……したから」
「幼馴染の輝と?」
「違うよっ!!輝も凄く仲がよかったけど……私の事覚えてるかな?」
「覚えてるわよ、あなたが輝のお母さん……ケイ子の経営する寮に住むって決まった時、輝ったら物凄く喜んでたみたいだし……。学校が終わったらそのまま寮を案内してくれるそうよ。迷惑かけないようにしなさいね」
「うん、わかってるよ。私、頑張ってみるね」
そうして母に車で学校まで送り届けてもらうと、門の前では昔懐かしい輝の姿があった。
久しぶりの再会に喜び、近況を語り合うと、入学式を済ませ私はこれから輝達姫野寮に住む人たちと挨拶する手はずになっている。
素敵な学園生活が待ってるかな……?
そんな思いを胸に、私は姫野寮の扉を開いた…………。
輝「とゆー訳でオレが寮を案内しまーす!寮生は全部で八人ね。はい、リスト。」
恋「ありがとう」
輝「自室以外は共同で、自由に使っていいからな。みんなけっこうここに集まってるし。あと家事は交代制でメシは好きな時に食っていいから。」
輝「……で、恋花は実家遠いし、三年間はここを実家と思ってくれていーし、何かあったらオレを頼れよ!」
姫野輝(16)
姫野寮を開く姫野ケイ子の息子。
(忘れがちだが資産家)
どんな時も明るく、いつも元気いっぱいの馬鹿。
輝「ああああっ!?オレのプリン無くなってる・・・楽しみにしてたのに・・」
何故かいつも不憫な思いをしている。
恋「輝・・っ!」
輝(うわ、オレ超いいこと言った!!)
輝「あ、さっそく寮生発見!おーーーーい!」
一「おー輝、どうし・・・ん?!!」
侑「・・・・」
浅間一斗(16)
喧嘩上等三雲学園のワル・・・の反面、世話焼きの仲間思い。
努力家で、実はものすごく頭が良い。
吾妻侑大(16)
必要最低限の事すら話さない無口。
実は日本に似た異世界の国の王子様。ファンタジー。
日本とは風習が違うため、時々とんでもない事をしでかしてしまう。
侑「風呂、入るのか・・?じゃあ俺も一緒に・・・」
恋「え???!!!」
一「は?!新しい寮生って・・・・俺らの中に一人だけ?!」
輝「そうだぞ!」
恋(俺ら・・?一人・・?)
恋(ん?・・・・・あれ???!!)
侑「・・心配するな・・」
侑「なんとかなる・・と、思う・・・」
恋「ぎゃあああああああああっ!!?」
―侑大に解放された―
恋「ねぇ輝、ここってもしかしてもしかしなくとも男子りょ・・わっ?!」
恋「てる〜〜〜っ!」
輝「よし次な!りゅーへー!そーたー!」
創「君は・・・そう、恋花さん・・」
龍「新しい子?!よろしくねーっ!」
熊「っス!!」
雨傘龍平(16)
熊三郎大好きメルヘン男子。
太陽のように明るい彼は、雨男。
龍「うわぁ・・今日は降らないって言ってたのにぃ〜・・」
相棒の熊三郎の正体は、龍平も知らない。
片縞創太(16)
霊力がとても強く、一部の霊とは会話できる。
創「うわっ、こんな所で殺されたんですか?やだなぁ・・」
不意に予知もできる。
そのためか少し言動が変。
創「恋花さん、あなたはここで、大切な人を見つけるでしょう・・」
恋「え・・?わっ!」
龍「こらーー!熊三郎ーーっ!!」
熊「女の子っスー!」
龍「ごめんねぇ〜熊三郎すぐ勝手に行っちゃうの〜っ!!大丈夫?怪我とかしてない?」
恋「大じょ・・・」
龍「あ!」
熊「ッスー!!!」
恋「へぶっ!!!」
和「何の騒ぎだ?」
和「また熊公がさわいでんのか?」
涼「問題を起こすな」
恋「ぷはっ!」
恋「あの・・ありがとうござい・・・・ま・・・・」
和「あれ?!お前俺のクラスの生徒じゃね?!」
恋(この人たち・・担任の先生と学園長の代理でしゃべってた人??!!!)
倉井和樹(23)
束縛されるのが嫌いな自由人。
普段クールぶっている為、女子生徒からは好かれる。
でも本当のところクールは見せかけで、人を馬鹿にするのが大好き。ゲラ。
和「うわー!!輝0点ー!!」
輝「ちょっ!!」
芝瀬涼清(23)
曲がったことが大嫌いな政党派。
涼「私に嘘を付けると思うな」
かなりの口下手。
誰にでも厳しいが本当はとても優しい。
恋「ご、ごめんなさい!少し一人にさせてっ!!!」
輝「れ、恋花?!」
恋「先生も含め、八人全員男の子だった・・ここは男子寮なのね・・(今更)」
恋(無理に決まってる・・。私には・・。)
来「こんにちは、恋花・・・ちゃん」
恋「誰・・・?」
田西来音(16)
人当たりがよく誰にでも優しい・・が輝には冷たい。
歌を歌うのが好き。
恋「あの・・?」
来「ここ気持ちいいよね。恋花ちゃんは海が好き?」
恋「は、はい」
――ボクね、この海が大好きなんだよ――
来「僕もね、この広い海が大好きなんだ.綺麗だよね」
恋「―――え?」
恋「もしかしてあなたは―――・・・」
輝「おーーーいっ!恋花ーっ!!見つけたー!!」
来「・・あ、馬鹿。」
恋「・・バカ?」
輝「はあ〜〜〜疲れた〜〜・・・」
輝「急に走ってオレを置いてくなよーっ!」
来「あは!いい気味!だね。」
輝「は?!」
輝「どうしたんだ?誰か嫌なヤツでもいたか?」
恋「あ・・誰かがイヤってわけじゃないの」
恋(男子寮がありえないだけで・・・。)
恋(今は寧ろ気になるの。約束のあの子が)
恋(今目の前にいる、この人かもしれないから)
来「さて、そろそろ中にもどろっか?」
恋(知りたい、この人の事を・・。)
来「はい、手。」
来「行くよ!」
恋「わっ!!」
輝「来音。」
来「・・・」
輝「・・・・。」
――――夕空の下を車で走る。
「上手くやってるのかしら、あの子。」
『大丈夫よ、輝じゃ頼んないけど和樹や涼清もいるんだし。あたしがいれなくて申し訳ないわね』
「ケイ子は仕方ないわ、また仕事で今度はアメリカにいくんでしょ?」
『ふふ、そうね。』
「くす・・今頃男子寮だって知ってあたしの事恨んでるわね」
『あら?あなたったら恋花ちゃんに教えてあげなかったの?』
「教えたらきっと実家から離れないもの。あの子は色々経験しなくちゃいけないの。過去から動けないままでいるのよ」
『そうね、でもまあ安心して。私もたまに顔を出すから。』
「助かるわ。お互い頑張りましょ。」
――――――――・・・・
こうして怒涛の姫野寮生活が幕をあけるのでした。
頑張れ恋花!!!