エジプト編

□OID―edosipE
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「あれ、ここは……?」

私は確か、カイロの街で典明くん達といったん離れて、鈍器を買うために一人で行動していたはずです。
そこで親切なヴァニラ・アイスさんに人通りがある所まで案内してもらって…………。

……ダメです、そこから先が思い出せません。
真っ暗な空間の中、特に身体を拘束されている様子もありません。
普通に動けますが、下手に動くとぶつかりそうで動けないのが現状です。
Pandoraさんで辺りを探ろうかと思っていたその時、近付いてくる光に私は目を細めました。

「……目が覚めたのか。」
「アイスさん……、です?」
「少々手荒だが、気絶してもらった。
ジョースター共の元に帰す訳には行かなかったからな。」

私を冷たく見下ろすその人は、さっき私を助けてくれたその人。
ヴァニラ・アイスさんは、私が包帯を巻いた腕で私を無理矢理た立たせると、暗い空間の奥へと進んでいきます。

「あ、アイスさん!!」
「その格好のままではDIO様にお目通り出来ない。
執事に整えてもらえ。」

DIO様。
アイスさんははっきりとそう言いました。
つまりここは、敵の本陣ただ中という事。

「……じゃあ、私を助けてくれたのは……、」
「DIO様の元にお連れする為だ。」
「……ッ!は、離してください!!」

帰らなきゃ。
一刻も早く、みんなの所に帰らなきゃ!!
そう思った私がアイスさんの手を振りほどこうとしても、彼の手はびくともしません。
それどころか、締め付ける指の力はどんどん強くなって来るのです。
その痛みに呻く私に、アイスさんは言い聞かせるように言います。

「お前はもう逃げられない。
籠に囚われた鳥と同じ。永遠にDIO様に飼われるのだ。」
「痛い……、離して……ッ!」

生理的な涙を浮かべた私に、アイスさんはようやく締め上げる力を弱めてくれました。
離してくれるつもりは無いらしいですが、それでも骨まで軋んでいるのでは、と思っていたさっきよりはましです。

「……もう、帰れないんです……?」
「帰さん。
これはDIO様の決定だ。」

光の無い暗い廊下の天井を見上げて、私は申し訳無さに思わず唇を噛み締めました。

きっと今ごろ、みんなカイロの街中を駆け回って私を探している事でしょう。
……いいえ、もしかしたら、勝手に行動した私を見捨てて、館探しに専念しているかも知れません。

……だったら、Pandoraさんで報せれば……!!

そう思った私が、そっとPandora Owlを出そうとすると、それさえも予測済みだったらしいアイスさんが、おもむろに口を開きました。

「…………言っておくが、」

びくりと身体を震わせた私を振り返り、アイスさんは言いました。

「館の周囲には門番がいる。
外と連絡を取ろう物なら、即座に撃ち落とされると思え。」
「……はい……。」

万事休す。
どうにもこうにもならなくなった私は、もう大人しくアイスさんに手を引かれる他無くなってしまったのです……。
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