エジプト編

□Episode68
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「……寒……。」

冬の朝。
私、冬泉春茉は何時ものように学校への通学路を歩いていました。

今は冬休み。
部活生以外誰もいない通学路を歩いていた私は、突然焦った様な声が聞こえてきました。

「そこの人!前!前見て!!」
「……??痛っ!?」

読んでいた本から視線を上げると同時に、私のこめかみ付近に痛みが。
……何でしょう、この既視感……。

「だ、ダイジョブかよ?」
「……大丈夫に見えるのだとしたら、あなたの神経を疑います……。」
「うわぁ、血!血が出てるぜ!!」

痛い所に触れてみると、確かに赤い血が手についています。
……これは、職員室に行く前に、保健室に行く必要がありそうです……。

「悪ぃ……!」
「そんな、大丈夫ですよ!
私も不注意でしたし、気にしないでください。」
「保健室まで送るって!」
「心配お掛けしました。
普通に歩けますし、一人で行けますよ。」

そう答えたものの、野球部の人は私を保健室に送っていくと言って聞き入れてくれません。
私が困り果てていると、彼と私の間に、緑色の学ランが割って入ってきました。
驚いた私達に、典明くんはにっこりと笑って言いました。

「危機感が足りない僕の彼女が、世話を掛けた様だ。
……後は僕が保健室に連れていくから、君は部活に戻ってくれ。」
「え?いや、でも……、」

追い縋る野球部員に構わず、典明くんは背中を向けています。

「じゃあ、行こうか。」
「え?……あ、はいっ!!」

典明くんに手を引かれ、私は約50日振りの学校に足を踏み入れたのです。




雪解けの星屑―fin.―
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