満月の子編(U)

□第六十二羽
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「見えた!帝都だ!……って、あれ?」

帝都が見えてきた、と歓声を上げたカロルは、しかしすぐに首をかしげた。
バウルに乗り込み、帝都・ザーフィアスに辿り着いた弥槻達は、街にあるはずの物が無いことに気付く。

「おいおい……!こりゃどういう事よ!!」
「結界が無い……!?」

驚きの声を上げるレイヴン達に、ユーリは唇を噛み締めた。
魔物の脅威から街を守る光の輪。
結界が何処にも見当たらないのだ。

「アレクセイの野郎の仕業か!」
「でも、何でこんな……!」

ユーリの言葉は、恐らく正解だろう。
問題は、何故アレクセイがそんな事をしたのか、だ。
帝国から離反したとは言え、結界魔導器を使い物にならない様な状態にする理由が分からない。

「そんなの、あいつをぶっ飛ばして直せば済む話よ!
……エステル、何処にいるの?」

リタは船縁にしがみついて、血眼になってエステリーゼを探している。
しかし、目立つはずの桃色の髪は、どれだけ目を凝らしても見付からない。

「……城の頂上。エアルが歪んでいます。」

帝都の中心にある巨大な城の頂上部。
そこを指し示した弥槻に頷いて、ジュディスがバウルを見上げた。
掴まってて、とジュディスが言うなり、バウルは城に向かって一直線に飛び始めた。



帝都突入
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