満月の子編(U)

□第六十羽
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「うわぁぁぁぁぁぁあ!!」
「……今日も元気ね、少年は。」

甲板に響くカロルの悲鳴と、何人かが飛び降りた様な物音。
その音に笑みさえ浮かべるレイヴンは、とても楽しそうだ。

「死ぬかと思ったよ……。」
「……レイヴンさんは楽しんでたって伝えておきますね。」
「止めて、ぶっ飛ばされる。
特にリタっちに。」

小声でそう言い合う二人は、まだユーリ達に気付かれていないらしく、彼らは注意深く辺りを見渡しているのが気配で伝わってきた。

「……これは……!衛兵が倒されている!!」
「だから、ここだけ弾幕が薄かったのか。」

それなら納得だぜ、と言うユーリを他所に、ジュディスが自分達以外の気配に気付いたらしい。

「誰?」

鋭い視線を向けられたのは、レイヴン達よりもユーリ達に近かったルブラン達だった。
ルブラン達だと分かると、彼らは目を丸くしながらも警戒は緩めない。

「まったく無計画な連中だな。
強行突破しか策が無いのか!!」
「その通りであーる!」
「ここで会ったが100年目なのだ!」
「また出たの?あんたらしつこすぎ!!」
「……シュヴァーン隊か。あんな事があったってのに、まだアレクセイにつくのか?」

警戒しながら、ルブラン達にそう言うユーリに、ルブランはフンッ、と鼻を鳴らす。

「我らは騎士の誇りに従って行動するのみ!」
「うんうん、我が部下ながら、なかなか良い事言うねぇ。」

そう満足そうに頷くレイヴンを他所に、話はどんどん進んでいく。
ボク達の邪魔をしないで!と半ば叫ぶように言ったカロルに続いて、リタも言う。

「そうよ!あんたらの顔見てると……、思い出したくない顔が浮かんでくるのよ!」
「へぇー、どんな顔なんだろうなぁ。よっぽど非道い顔の奴なのね。」
「……え!?」

小声で言うでも無く、レイヴンはユーリ達に聞こえるよう、はっきりと言葉を発した。

「レイヴン!?」

その言葉に応えるように姿を見せたレイヴンは、よっ、と軽く手を挙げて笑う。

「なかなか良い顔してるじゃないの。」

悪戯が成功させたと言わんばかりの彼の後ろで、弥槻はやれやれ、と小さなため息を吐いた。


再会の洗礼
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