レプリカ編

□Episode71
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「……元々ローレライは、地核からの解放を望んでいた様だ。
俺やルークに接触したのも、地核に留まり続ける事により、この星に悪影響が出ると考えた為らしい。」

アッシュの言葉を受け、ジェイドが考え込む。

「……確かに、ティアの身体に乗り移ったローレライは、そんな事を言っていましたね。」
「それなら、ローレライが閉じ込められている場所は地核なのですか?」
「地核だった、と言うべきじゃない?」

ローレライが地核に閉じ込められていたのは事実。
しかし、今は状況が変わっているのだ。

「そうだ。今は地核にはいない。
ローレライは、お前達がヴァンを倒した後、地核から消えた。」
「なら何処に……、」
「……奴は俺との最後の接触で言っていた。ヴァンの中に封じられた、とな。」

疑問を遮ってそう言ったアッシュに、ルークもそう言えばそんな事を言ってた様な……、と考え込んだ。

「ヴァンはさ、地核に落ちた時にローレライを自分の中に閉じ込めたんだよ。」

アッシュが言う通りに、と紫音が続ければ、彼は顔を背けて舌打ちをする。
どれほど怪我をしていても、ローレライを己の物にしたのなら、その怪我もすぐに治るだろう。
何せ、ローレライは第七音素の意識集合体なのだから。

「けど、どうやって閉じ込めたんだろ。」
「考えるのはそこではありませんよ。」

あの状態でどうやって、と眉を顰めるアニスに、ジェイドは首を振った。
今考えるべきはそこでは無い、と言う彼に頷いて、アッシュも話を進める。

「そこまでは俺にも分からない。
とにかくヴァンは、ローレライを体内に取り込んだ。」
「もしそうなら、ローレライの解放ってのは、ヴァンからの解放って事か?」

これまでの話を整理して、結論を口にしたガイにアッシュが頷いた。
ローレライはオールドラントの重力を離れ、音譜帯の七番目の層になる事を望んでいる、とした上で、アッシュはその為にローレライの宝珠を探しているのだとも。

「この剣に填める宝珠が無ければ、剣は鍵としては機能しないからな。」

手の中にある剣をちらりと見て、アッシュは紫音にも目を向けた。
何処にあるんだ、と言わんばかりの鋭い視線に、紫音は肩を竦めて応える。
その様子が気に障ったのか、アッシュは更に鋭い視線を向けてくる。

「おい!ふざけてる場合じゃないんだぞ!」
「ふざけてなんかないよ。」
「だったら教えろ!」
「ルークを解剖してみる?」
「……てめぇ……!」

のらりくらりとした紫音の態度に、剣を握るアッシュの拳は震えていた。
そんな時、ルークがしみじみと呟く。

「でも、宝珠は本当に何処にあるんだろうな……。」

それを聞き付けたアッシュが遂に爆発した。

「……お前が!お前がローレライから鍵を受け取っていれば、こんな事にはなっていなかったんだ!」

世界中、何処を探しても見付からないのだ。
ルークがしっかりと受け取っていれば、こんな苦労は必要無かった。
六神将と探し合う事も無かったのだ。
アッシュの剣幕に、返す言葉も無くうつ向いたルークに背を向けると、アッシュは苛々しながらも言う。

「恐らく、セフィロトを通じて何処かに投げ出された筈だ。
六神将の奴らも鍵を探している。
もし奴らに奪われでもしたら、ローレライを解放出来なくなる。」
「……解放出来ないと、プラネットストームが第七音素を生むため、更に激しくなって……、」
「……世界は滅ぶ。」

ナタリアの言葉を引き継いだティアが呟けば、全員が黙り込んだ。
わずかな沈黙の後、そう言う事だと頷いたアッシュは、持っていた剣を鞘へと戻し、そのまま無言で出口の方へと歩き出す。

「アッシュ、ちょっと待てよ!
何処に行くんだ!」

慌てて呼び止めたルークを振り返らず、アッシュはその苛立ちをぶつける様に怒鳴り返した。

「ここにも宝珠は無かった!
俺は別の場所を探す。」

そう言い残すと、アッシュは再び出口へと急ぐ。
そんな彼に、ルークが目的は一緒なんだから、一緒に探そう、と提案するも、それはあえなく却下された。

「オレ、レプリカだからアッシュの助けが必要なんだよ!」
「良い加減にしろ!」
「止めなさい!
二人とも、喧嘩してる場合じゃないでしょ?」

ティアの制止により、ようやく口論を止めたものの、アッシュの表情は険しいまま。

「絶対安全な所に隠してあるよ。
持ってる人殺したら、たぶん宝珠も無くなっちゃうし、持ってる人自覚してないし、手は出せないと思うよ。」

そんなアッシュに、だから心配要らない、気楽に行こうよ、と笑う紫音は、しかしそうは思わないらしいアッシュに小突かれてしまった。
痛みに呻く紫音を他所に、すたすたとそのまま立ち去るアッシュを見つめながら、ルークは複雑そうに唇を噛み締めている。

「アッシュ……。」
「ここにいても仕方無い。
今は、あいつの好きにさせておこうぜ。」
「……あぁ。」

ガイに促され、ルークはまだ宝珠を気に掛けている素振りを見せるが、ひとまず今はガイが言う通りにする事にしたらしい。
気分を切り替えた彼の提案で、旅の預言師を追い掛けようと、バチカルへ向かう事にした。
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