レプリカ編

□Episode70
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「……今のは、フォミクリーでレプリカ情報を抜かれたものかも知れませんね。」
「どうしてそうだと分かる?」

無言で状況を見ていたジェイドが、表情を1人険しくするのを見て、ガイが彼に視線を向ける。
それを受けて、実験では情報を抜かれた被験者が一週間後に死亡、もしくは障害を残すと言う事例もあったのだ、と答えれば、皆顔を見合わせた。

「先ほどの方と、フォミクリー被害者の亡くなり方は、良く似ています。」

そう続いた言葉に、仲間達の表情は更に厳しくなる。
もし本当にレプリカ情報を抜いてるなら、止めさせるべきだ、と言うルークに頷いて、ひとまず第一研究所にいるスピノザから話を聞こうと歩き出した。

「紫音は知っているのですか?」

隣についたジェイドが小声で紫音に問い掛ける。
その疑問に、紫音は静かに首を振った。

「……分かんない。」
「分からない?」
「私が知ってる展開では、シンクがその役目を担ってた。
でも、シンクはヴァンから離反して今はダアトでイオンを守ってくれてる。
……それなのに、展開は変わってない。
だから、誰がやってるのかは……。」
「未来が変わっちゃったって事?」

話が聞こえていたのか、アニスが歩く速度を落として紫音達の側までやって来る。
彼女の疑問に、紫音は頷く事で肯定とすると、2人は揃って眉をしかめた。

「……預言を撤廃し、紫音が知る未来とも変わってきている。」
「はぅー……、これが紫音達の世界では普通なんだよね?」
「そうだよ。」
『預言も無ぇから好きな事出来るぜ!』

ボールの中からケタケタと笑いながら言うルギアに、2人はそう言う事なら、と目を輝かせた。
そんな彼らに囲まれた紫音は、嫌な予感にずりずりと2人から距離を取る。

「好きな事だそうですよ、アニス。」
「好きな事だそうですよ、大佐♪」
「ちょ、2人とも待って……?
今はそんな事してる場合じゃないよね!?」

擽ろうとしてか、ジリジリと距離を詰めるジェイドとアニス。
余計な事を言ってしまったと口をつぐんだルギア。
全力で2人から逃げる紫音は、先を歩いていたルーク達のすぐ側を駆け抜ける。
紫音を背中に庇いながら、遊びに来たんじゃ無いんだぞ、とガイが呆れながらも完全に紫音で遊ぶ気でいる2人を止めれば、彼らは仕方無さそうに頷いた。

「ほら、紫音も隠れてないで行こうぜ。」
「ガイお兄ちゃん頼れるー!」
「お兄ちゃ……、」
「兄貴の方が良かった?」
「おーい、紫音もガイで遊ぶなよー。」

ルークに叱られ、ようやく皆が大人しくなり、スピノザに会うために第一研究所に足を踏み入れた。


******


「おぉ、今度はお前さん達か!
しかし……、大変な事になってしまったな。」

スピノザの研究室へ行くと、紫音達に気づいたス彼は、何やら興奮している様子だった。

「やっぱり、タルタロスじゃ抑えきれないほど、地核の振動が激しくなってるのか?」
「うむ。このままでは、再び大地が液状化するかも知れん。」
「それは困るよね、頑張ったのに。」

大地が液状化してしまえば、元の魔界に逆戻りしてしまう。
パッセージリングも停止した今、新たなディバイディングラインも作り出せない。
別の方法を考える必要があるのだ。

「……やっぱ封じ込めるだけじゃなくて、根本的な瘴気の消滅を考えた方が良いのかな。」
「それなんじゃが……、ルークの超振動はどうじゃろか。」
「……でも、超振動で瘴気を消すなんて、そんな事出来ないんじゃ……。」

アクゼリュスでの事を思い出したのか、ルークの表情が曇った。
あの時は、パッセージリングを破壊し、街を1つ壊滅させたのだから。
しかし、スピノザはそんなはずは無いと首を振る。

「超振動は、物質を原始レベルにまで分解する力がある。
わしは超振動は専門ではないが、恐らく可能じゃろう。」
「アクゼリュス消滅時の超振動を単純計算したところ、かなりの力を持っている様ですし。」

スピノザに賛同する様に、同室していた研究員も続けば、ルークとジェイドが考え込んだ。

「…………、そう言えば、先ほどの口振りでは先客がいらした様ですが?」
「あぁ、アッシュじゃよ。
外殻降下時の第七音素の流れとやらを調べているとか何とか……。」
「まぁ、アッシュが!?」
「あいつは今何処に!?」

強引に話を逸らしたジェイドを他所に、スピノザの答えに分かりやく食い付いたルークとナタリアにたじろぎながらも、スピノザは、ここで測定していたセフィロトの情報を食い入るように見ていたと教えてくれる。

何処に行ったか分かるかと問い詰めるナタリアに、研究員がロニール雪山に向かった様だと言えば、彼女は早速身を翻し、研究室を後にする。
そんな彼女を追い掛け、次の目的地はロニール雪山になった。
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