レプリカ編

□Episode69
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「……みんな……。」
「話は終わった?……って、どうしたのみんなして!!」

今にも消えそうなほどの小さな声で、アニスが紫音達を呼んだ。
話が終わったのか、と振り返った紫音達は、彼女達の様子を見て目を見開いた。
先ほど言い合いになったアニスとアリエッタの2人が、喧嘩の跡があるのは分かる。
しかし、同席したシンクとイオンにも、1発ずつ殴られた跡があるのだ。

「皆さん、ご迷惑をお掛けしました。」
「……ごめんなさい、です……。」

イオンと一緒に頭を下げるアリエッタ。
その横では、アニスが不貞腐れながらも同じ様に頭を下げる。

「……紫音を見付けて追い掛けて、ディストと話してるのを聞いた、です……。」
「……うん、それで?」

ポツポツと語りだしたアリエッタ。
誰も話してくれなかった事を知ってしまい、誰も信じられなくなった。
ロニール雪山でリグレット達から離反してからも、事あるごとに、ヴァンやリグレット達は本当の事を話す、これが終わったら話してやる、と餌をちらつかせ。
モースの奪還、そして今回の足止め。

『……モースが動いたか。』
『はい。導師守護役に指示を出し、導師を連れ出すつもりの様です。
はぐれ者の殺害も、併せて行う様にと。』
『…………どちらも死ぬかも知れんな。
まぁ、良いだろう。
足止め程度の役目は請け負ってやれ。』
『はい。』

今回も、聞いてしまった。
だから、同じく六神将から離脱したシンクを探し出し、助けを求めた。
嫌そうな顔をしながらも、彼もヴァンに着いた神託の盾兵達を蹴散らすのに協力してくれたのだと。

「……で、何で協力したシンクと、肝心のイオンにも殴られた跡あるんだ?」

ルークの疑問に、シンクはあからさまに顔をしかめた。
そんなシンクの様子に、イオンは苦笑いをしながらも、実は……、と口を開いた。

「……アリエッタに秘密にしていた罰として、僕達にも1回ずつ平手打ちが飛んできたんです。」
「……大好きな被験者イオンと同じ顔の僕らを、良くもまぁ容赦なく打てるよね。」
「……これで、恨みっこ無し、です……。」
「こっちは良い迷惑だっ!!」

シンクの怒鳴り声に、ビクッと身体を震わせたアリエッタは、慌ててイオンの背中に隠れた。
それが気に入らなかったらしいシンクが、更に舌打ちする。

「……さて、アリエッタ。」
「…………何ですか?」

イオンとアリエッタの前に立ったジェイドを、警戒心丸出しで睨み付ける彼女に、ジェイドは言う。
話すのはもちろん、先ほど話に上った紫音の提案だ。

「イオン様は、このままダアトに止まってもらいます。
教会の再編、預言の取り扱い等、イオン様でなければまとめられない事が多いでしょうからね。」
「はい、僕もそれが良いと思います。」

ジェイドの言葉に、イオンは笑顔で頷く。
しかし、そこで問題になるのが、彼が再びモースやヴァンに狙われた時だ。
今のダアトには、彼を守る力が圧倒的に足りていない。
ジェイドがそれに言及すると、アリエッタは何を言いたいかを察したらしい。

「分かりました。
イオン様は、アリエッタが守る、です……。」
「お利口ですねー。
皆まで言わずとも分かっていただけるとは。」
「……その数に僕も入ってるんだね。」
「大正解です♪
いやぁ、素晴らしいですねぇ。」

にこやかに笑ったジェイドに舌打ちすると、シンクは背中を向けた。

「……ちっ。
アリエッタ、今回の騒動の件、トリトハイムに説明しに行くよ。
どうせ、リグレット達はもういないんだ。
導師イオンの護衛の件についても、いろいろ話を詰めなきゃならないんだから。」
「は、はいです……!」

文句を言いながらも、シンクはてきぱきと状況を整理し、今やるべき事を先に片付ける事にしたらしい。
アリエッタを連れ、彼はじゃあひとまずここで、と言い残し、礼拝堂を出ていった。
残されたのは、今だうつ向いたままのアニスを取り囲む紫音達だけだ。
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