レプリカ編

□Episode69
2ページ/4ページ




「はい喧嘩しなーい。」

睨み合うアニスとアリエッタの間に割って入った紫音は、邪魔しないで!と言う2人の頭を順番に小突く。
何故そんな事をされなければならないのか分からないアニス達は、揃って怪訝な顔をしている。

「アリエッタ、忘れてない?」
「な、何を……?」
「事故だったとは言え、ライガがイオンを襲おうとした事。
それ以外にも、イオンに危険が及ぶかも知れない場所で戦ってたよね。」
「…………それ、は……。」

紫音の言葉に、アリエッタは抱き締めていた人形に込める力を強めた。
しかし、彼女の口から反論が出て来る事は無い。
何故なら、それは変えようの無い事実なのだから。

「……アニス、アリエッタ。
ちゃんと話し合いましょう。
僕らだって、2人に秘密にしている事があったんですから。」

そう言いながら、イオンはシンクに視線を向ける。
その視線に、露骨に顔をしかめたシンクに構わず、イオンは話を進めていく。

「知らない方が良いのかも知れない。
ですが、アリエッタはもう気付いてしまっている。
それに、彼女にはそれを知る権利がある。」

イオンの言葉に、2人は渋々頷いた。
僕は関係無いね、と言い放つシンクにも、僕達の大切な話ですから、と彼も同席する事は既に決まっているらしい。

「では、我々は礼拝堂で待っていましょう。」
「はい、しばらく掛かるとは思いますが、そうしていただけるとありがたいです。」

イオンの言葉に頷いて、紫音達はぞろぞろと教会の礼拝堂へと向かう。
歩きながら、ルークはイオンが無事に戻ってきた事に心底安堵したように息を吐いた。

「……ったく……。一時はどうなるかって思ったぜ。」
「全くだ。アニスがイオンを連れ出した時は驚いたしな。」
「えぇ。リグレットが足止めに来た時、もしアリエッタ達が来ていなければ……、」

預言を詠まされ、そのまま消滅していただろう、と険しい顔で言うジェイドに、紫音以外、全員の顔が強張った。
消える自分を使って、ティアの体内を蝕む瘴気を消すつもりだった事は、彼と紫音の会話から計り知れる。
それを思い出してか、暗い顔をするティアに、ルークが心配そうに声を掛けた。

「ティア、どうかしたのか?」
「……兄さんは知っていたのかしら。
イオン様が死ぬと言う事……。」

モースに脅されたアニスがイオンを連れ出した。
それを追い掛けようとしたルーク達の前に、リグレットが足止めの為に立ちはだかったのだと。
そんな状況で、ルーク達に手を貸してくれたのはアリエッタとシンクだった。
何処で2人がモースの思惑を知ったのかは分からない。

「……イオンの身体が弱いのは、みんな知ってたからね。
その可能性は、当たり前に考えてたんじゃないかな。」

だから、アリエッタ達もイオンが消えるのを阻止する為に協力してくれたのだろう。
うーん、と考え込みながらも、1つの可能性を示した紫音の言葉に、皆険しい顔になった。

「……まぁ、イオン様が今生きているだけ良しとしましょう。
ともかく、これからの事も考えなければいけませんから。」

ジェイドの言葉に、紫音が手を挙げる。
何かありますか?と訊ねるジェイドに、紫音は手を挙げたままで答えた。

「はいっ!イオンはこのままダアトに残ってもらって、アリエッタとシンクは、イオンの警護に付けると良いと思います!」
「どうしてですの?
またヴァンに狙われるかも知れませんのよ?」

ナタリアの反論に、紫音はそれはそうだけど……、と言い淀んだ。
彼女の視線の先は、右往左往しているダアトの司祭達。
紫音の視線を追ったジェイドは、ふむ、と顎に手を当てた。

「……ダアト軍部の最高指令官、ヴァンの出奔。
戦犯として捕らえられた、大詠師モース。
それにより混乱に陥っているダアトには、指導者が必要です。
その最後の指導者であるイオン様までいなくなってしまったら、それこそこの混乱に収拾が付かなくなってしまう、と言うところですか。」
「そう、そんな感じ!
で、アリエッタとシンクなら、イオンを守るのに問題無いでしょ?」

言いたい事を全て察してくれたジェイドの言葉に、紫音は大きく頷いた。
確かに、預言の扱いをどうするか等は、イオンがダアトにいたか方が良いだろう。
紫音達がその方向性で話を進めようとした時、礼拝堂に複数の足音が近付いてきた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ