レプリカ編

□Episode68
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「ハッ、はぐれ者が何を……、」
「イオン!アニス!……、と紫音!?」
「お、良いタイミング。
みんな来たね。」

ルーク達も追い付いてきた。
バチカルで歪んだ空間に身を投げた紫音がこの場にいる事に驚いているらしい彼らが目を丸くするのを見ながら、紫音は静かに口を開く。

「……やがて、それがオールドラントの死滅を招く事になる。」

イオンが語るはずだった惑星預言。
それは、モースが望む繁栄では無く、滅亡への道標。

「ND2019。キムラスカ・ランバルディアの陣営は、ルグニカ平野を北上するだろう。」

紫音以外、誰も何も言わない。
誰も知らぬはずの惑星預言が語られているのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。

「ND2020。要塞の街はうず高く死体が積まれ、死臭と疫病に包まれる。
ここで発生する病は新たな毒を生み、人々はことごとく死に至るだろう。
聖なる焔の光は、穢れし気の浄化を求め、キムラスカの音機関都市へ向かう。
そこで咎とされた力を用い、救いの術を見出だすだろう。」

語り終わった紫音が、ほぉ、 と1つ息を吐いた。
だが、他は相変わらず沈黙したまま。

「まぁ、つまり預言のまま進んでたら、死の星になってた訳だね。」

そう話を纏めた紫音に、ようやく理解が追い付いてきたらしいモースが声を荒げた。

「……う、嘘だ!そうだ!嘘に決まっている!
貴様の様なはぐれ者が!正しい惑星預言を知っているものか!!」
「そう?
私の世界でも、昔から戦争はあった。
戦場で放置されたたくさんの死体から、疫病が発生した歴史もある。
預言はその事を言ってるんじゃ……、」
「やかましいっ!!」

言い募る紫音を、一喝して黙らせたモースは、鼻息も荒くしながら後ずさる。
その間に、ルーク達はイオンとアニスの側へ、そして紫音の横にはジェイドが近付いてきた。

「導師よ!ほ、本当の預言を詠むのだ!
本物の!繁栄の預言を!!」
「預言預言預言!馬鹿の一つ覚えみたいに!
そんなのが何だって言うんだよ!」

なおも預言に縋るモースに、遂にルークが怒りを露にした。
預言に振り回された人間の怒りに、誰も異を唱えない。

「馬鹿を言うな!人類が存続する為には預言が必要なのだ!」
「預言が必要なのは、モースでしょ。」

髪を弄りながら、紫音も呆れた様に言った。

預言を廃止して1ヶ月。
まだ預言が廃止されて日は浅いが、人々は戸惑いながらも、既に預言が無い生活が出来ているのだ。
今さら、預言は必要無い。

「預言の通りに生きれば、繁栄が約束されるているのだ!
それを無視する必要があるか!
私は監視者だぞ!人類を守り導く義務があるのだ!
私はこのレプリカ共を使って、ユリアの預言通り、必ず戦争を引き起こして見せる!
それこそが、ただ一つの救済の道なのだ!!」

そう喚き散らすモース囲む様に、何処からかレプリカ達が集まって来た。
そんな彼らを見て、軍人ではない彼らと戦うのは、と躊躇するナタリアに、紫音は首を振る。

「……この人達は、指示する人がいなかったら襲って来ないよ。」
「……ちっ。逃がすって言うのか!!」
「イオンは死ななかった。
アニスの両親を助けられた。
火山の中、急いでここまで来たみんなも疲れてる。
無駄な体力は、使うべきじゃないと思う。」

モースを捕らえるには、またと無い機会だ。
だが、紫音の言葉に舌打ちしながらも、抜き掛けていた武器を収め、全員モースが逃げるの見送った。
ガイが息を飲んだのは、その時だ。
モースを護衛するように囲むレプリカ達の中に、何かを見付けたらしい。

「あれは……!」
「お姉さん、いたんでしょ。」

確信を持って訊ねた紫音に頷いたガイの表情は、とても悲痛なものだった。

「……逃げられてしまいましたね。
仕方ありません。」

わざとらしい溜息を吐いたジェイドは、これまたわざとらしく肩を竦める。
この場にいただけでも、かなりの数のレプリカがいた。
ヴァンが持っているかつてのホド住民の情報があれば、あれだけのレプリカを作り出せるだろう、とガイが呟く。
まさか、こんな形で姉と再会するとは思っていなかったのだろう。
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