レプリカ編

□Episode66
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「なんだ?レプリカだって虐められでもしたのか?
なら、ガイラルディアと一緒にここで暮らすか?」
「……陛下。笑えない冗談は止めてください。」
「えー……、賛成なのに。」
「……紫音も。」

止めなさい、と言うジェイドに、これ以上小言を言われぬ様にと、二人して顔を見合わせて小さく笑う。
その様子に、更にため息を吐いたジェイドほ、もう何も言うまい、と言わんばかりだ。

「あとはアッシュの件だな……。」
「はい。陛下の推測通り、彼は六神将の生存を知っていました。
プラネットストームの活性化についても、見当がついていた様です。」

何故アッシュを探しているのか、とティアと紫音が首をかしげれば、ピオニーはローレライの鍵を持っていると言う目撃情報があると。
更に、それでプラネットストームの活性化を抑えられるのでは、という仮説がある、とも。
その話を聞くと、皆が一様に考え込んだ。

「……そう言えば、リグレットもローレライの鍵がどうとか言ってたな。」
「えぇ。教官達も、ローレライの鍵を探してるのかしら……。」

答えが出ない疑問。
その疑問の前に、ジェイドがしかし、とその思考を遮った。

「……しかし、ガイ達の報告を聞く限り、プラネットストームの活性化はローレライが何処かに封じられている事が原因ですよね?
それが事実なら、鍵よりもまずはその状況を理解するべきではありませんか?」

そう言いながら、皆に視線を巡らせるジェイドに、アニスがその通りだと頷き、そう言えば、とルークに視線を向けた。

「ローレライの声って、ルークにも聞こえるんでしょ?
何か言ってなかったの?」
「うん……。外殻大地を降ろした時からこっち、ローレライの声は聞こえないんだ。」

最後に言われた言葉を思い出そうとしているのか、首を捻るルーク。
その時は何と言われたのか、と更に聞かれ、思い出しながらゆっくりと話し始めた。
……それが、皆に驚愕をもたらす内容とは知らずに。

「……確か、鍵を送るってのと……、助けてくれって。
……あとは、栄光を掴む者が捕らえようとしているとか何とか……。」
「おいルーク!そいつはかなり重要な事だぞ!
どうして何も言わなかった!!」
「……え……。だって、意味が分からなかったから……。」

ガイに詰め寄られたルークが、しどろもどろになりながら答えると、アニスががっくりと肩を落とす。
ローレライが鍵と言ったら、ローレライの鍵だと想像が付くでしょ、と呆れたため息を吐くアニスに、紫音はそれは違うよ、と首を振る。

「今は、話を聞いたからそう思うだけで、あの時に、ローレライの鍵がーとか言われても、何じゃそりゃって感じでしょ。」
「……う……、そりゃあ、そうかもだけどぉ……。」
「……なるほど、あの時の紫音の行動は、こう言うことだったんですね。」
「ほぇ?」

一人納得したように呟いたジェイドは、それを聞き付けたアニスに、何でもありませんよ、と笑うと、ガイも険しい顔で頷いた。


「……ヴァンの事だってそうだ。」

ガイの言葉に、皆が険しい顔になる。
ただ一人、ルークだけが意味が分からないらしく、不思議そうな顔をしている。
その反応に、ジェイドが思い出したように眼鏡を押し上げながら呟いた。

「……確か、ルークは古代イスパニア語を知りませんでしたね。
ふむ……、それでは仕方無いかも知れません。」
「……そうだった……。
日常生活に必要な事しか教えて無かったんだった……。」
「あはは……、ドンマイ、ガイ。」
「紫音も知らないでしょう?」
「うん。」

ルークは知らなかった。いや、教わっていなかったのだ。
この反応は、当たり前だとも言える。
それに気付いたガイは、頭を抱えた。


「……『栄光を掴む者』は、古代イスパニア語でヴァンデスデルカと言うの。」

栄光を掴む者。その意味を答えたのはティアだった。
それを聞けばルークもようやく理解したらしく、ハッと目を見開いた。
そして、全員の視線が紫音に集まる。
普段は、極力人を殺さないようにしている紫音が、どうにか止めを刺そうとしていた意味。

何故あんな無理をしようとしていたのか。
そして、ヴァンがローレライを閉じ込めたこの現状。

「けど、ヴァン師匠はもう……!!」
「……地核に飛び込んだヴァンが還ってくるのは知ってた。
だから、その前に止め刺したかったんだけど、出来なくて……。」

こうなったのは自分のせいだ、とうつ向いた紫音に、気にするのはそこじゃない、とジェイドは首を振る。
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