風の螺旋階段

□Episode06
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「ロゼさん、ずっと見てますね。」
「変わった子だよ、ホント。」
「あの時のスレイさんとロゼさん、ホントおかしかったですわ、ふふふ……。」
「他人事だと思って……。」
「何があったの?」

スレイとライラが話している内容が聞こえてきて、ルミエールは何かあったのかと傍にいたエドナにそっと訊ねた。
その時の事を思い出したのか、ニヤリと愉しそうに笑った彼女は、こうしたのよ、とルミエールに同じことを実演してくれた。

「オーバーケーだーぞー。
ちょっとからかったら、あの子スレイを殴り飛ばしたのよ。」

中々の見物だったわよ、と笑うエドナに、ルミエールは苦笑いしか返せない。
突然後ろ……、しかも耳元で囁かれては、誰だって驚く。
しかも、あぁ見えて怖がりなロゼならなおさらだ。

「……あんまりからかわないであげてね。」
「どうしてもって言うんなら、考えてあげない事も無いわ。
今のところは、ミボもいることだし。」

そう肩を竦めたエドナは、ちらりとミクリオ達に視線を向ける。
相変わらず、進展が無い雰囲気に、彼女は溜め息を吐いた。

「……進展無しじゃない……。」
もうぶち破って良い?」
「遺跡荒らしになるけど、仕方無いよね。」

痺れを切らしたエドナとルミエールが、それぞれ扉を突き破ろうと構えを取る振りをして見せた。
それを見たミクリオが、慌てて止めに来る。

「バカな!貴重な遺跡を破壊するなんて!何を考えてるんだ!!」
「……はぁ。とりあえず、ぶち破らないでいてあげるから、さっさと開けなさい。
好きなんでしょ、こういうの。」

ミクリオの抗議に、エドナは素直に構えを解くと、傘を差した。
ルミエールも同じく武器を収めれば、ホッとしたように安堵の息を吐き、ミクリオはぶつぶつと呟いているスレイに歩み寄る。

「入り口自体が閉じられている遺跡か……。
やはり、閉じている意味があるんだろう。」
「けど、封印の類じゃないな。鍵穴すら無いし。」
「……スレイ、久々に勝負しないか。」
「……良いよ。絶対オレが先に開け方を見付けてやる!」
「フフ、負け越してるのを忘れているようだな。」

そう笑い合った二人は、改めて入口の扉を入念に調べ始めた。
その内、入口だけに固執するのを止めたのか、スレイが遺跡中を見て回り始めたのだ。
楽しそうに駆け回るスレイに、勝負を諦めたか、とミクリオが笑っていると、ライラが見て回らなくて良いのか、と首を傾げる。

「スレイさんのあの様子……。
何か掴んだのでは無いのでしょうか?」
「入口なんだから、きっと入口に答えがあるはずだ。
もしくは、この扉の周囲に。」
「そこまで言うんだから、答えは見付かりそうなんだよね?」

ルミエールの疑問に、しかしミクリオは罰が悪そうに視線を逸らした。
言葉のわりに、まだ何も見付けられていないらしい。

「口だけは達者ね。
早く扉を開けなさい。私が待ちくたびれる前に。」
「今やってる!!」

そう返したミクリオが、再び扉に向き直った時、どうやらアジトを一回りしてきたらしいスレイが帰ってきた。
良い笑顔で戻ってきた彼は、扉の前に戻ってくると、そのまま扉を押す。
すると……。

「来た!」
「やっと開いたー……。」
「待ちくたびれたわ。」

回転しながら、見事に扉は開いた。
扉の向こうは、奥まで通路が広がっている。
答えが扉の周囲に無かった事に唖然としていたミクリオは、納得した様にスレイに言った。

「……なるほど。さっきのが扉の回転を邪魔してたって訳か……。」
「へへ。今回はオレの勝ちだな!」
「どうやらね。……悔しいけど。」

素直に負けを認めたミクリオに、自慢げに胸を張っていたスレイを他所に、ずっと静観していたロゼが動いた。

「さて、と……。」
「ロゼも行くのか?」
「スレイが行くならね。」

当たり前じゃない、と先に行こうとするロゼの肩を慌てて掴んだスレイは、ゆっくりと言い聞かせるように口を開く。

「……ロゼ、遺跡の中には、人にとって魔物と言えるほど手強い獣がいる事があるんだ。
そんな奴らを、オレは憑魔って呼んでる。」
「ふんふん。」
「……聞いてる?」
「憑魔。めちゃつよの獣、でしょ?
聞いてる聞いてる。」
「危ないかも知れないんだって!」

ロゼは着いてくるべきじゃない、と言うスレイに、しかしロゼは大丈夫だ、と余裕を崩さない。

「スレイがだいじょぶなら、あたしもだいじょぶだって。
知ってるでしょ?あたしの実力。良い退屈凌ぎが出来そうじゃん。」

そう笑ったロゼは、一人でさっさと行ってしまう。
まったく、と溜め息を吐いたスレイの横を通り、いつの間にいたのか、デゼルもロゼの方へと歩き出した。

「俺も行く。
お前達に余計な手間は掛けさせん。」
「けど、デゼルは憑魔を浄化出来ないじゃないか!」

スレイのその言葉に、鼻で笑って返したデゼルも、そのまま行ってしまった。
あまりに気ままな二人に、スレイは脱力したように肩を落とす。
その肩を励ますように叩いて、ルミエールも遺跡へと歩き始めた。

「デゼル兄さんは強いから。
追い払うくらいなら訳無いよ。」
「いざとなれば、助けてやれば良いさ。」

ルミエールとミクリオの言葉に同意するように頷いたライラも、それに続く。

「ですね。せっかくの遺跡探検です。
楽しみましょう。」
「奇妙なバカンスになりそうね。」

仲間達の言葉に頷いたスレイは、気持ちを切り替えて遺跡の奥へと足を踏み入れた。
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