幼少期編

□Episode05
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「ただいまですーっ!!」
「ただいま!!」
「あぁっ、二人ともお帰りなさい!
典明くん、春茉が迷惑掛けなかった?」
「うん、バッチリだよ!」
「ちゃんとお買い物も出来たわね。」

無事おつかいを済ませ、二人が家に帰ると、母親達が玄関で待っていた。
心配で仕方無かったのか、春茉の母親は、春茉の姿を見るや、すぐに抱き付いてきた。

「くる……し……。」
「あらあら、冬泉さん!」
「はるなちゃん!!」
「……あっ、嫌だ私ったら……。」

上手く呼吸が出来ず、青白くなった春茉の背中を、典明と彼のトモダチが二人で撫でてくれているが……。

「……ふぇぇぇえ……っ!」

驚いたのと、苦しかったのとで、春茉の目に涙が浮かぶ。

「よしよし。」
「……うぅ、のりあきくん……。」
「フフ、典明ったらすっかり春茉ちゃんのお兄ちゃんね。」
「しっかりしてますねぇ……。
同じ四歳なのに……。」

母親達の会話を聞きながら、典明は自分が買ってきたばかりの買い物袋をガサガサと広げ始めた。
どうしたのかと驚き空気のなか、典明は春茉の母親に台所を借りられないか、と聞いてきた。

「はるなちゃん、僕のサクランボ、あげる!!」
「サクランボ……?」
「……ほんとは僕がたべたいけど……。
きょうはトクベツ。」
「……いっしょになら、たべる。」

典明がサクランボが大好きだということは、春茉にも分かる。
せっかく買ってきたサクランボを自分だけ食べるのは、典明に悪いと思ったのだ。

「……うんっ、いっしょにたべよ!」
「はいです!」
「良かったわね、典明。」
「うん!!
……はい、ママも!」
「あら、ありがと。」
「せっかくだから、リンゴも切ってくるわ。」
「りんごーっ!!」

笑顔が戻った春茉に安心して、典明達は、それからしばらくして帰っていった。
食後のリンゴをも食べてしまい、春茉が再びぐずり始めたのは、二人が帰って一時間もしないうちだった。
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