幼少期編

□Episode04
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「はーい、みんな!
今日からりんご組の仲間になった、春茉ちゃんです!
みんなー、仲良くしてねー!」
「「はーい!!」」

入園式は滞りなく終わり、春茉は今、新しい仲間として、先生から紹介されていた。
物珍しそうな視線は、とても居心地が悪く、春茉は助けを求める様に、一番後ろに座っている典明を見た。
頼りのトモダチは、彼のトモダチにじゃれついていて、頼れるのは典明しかいないのだ。

『ダイジョウブ、だよ。』

典明の口が、そう動いた。

『僕がいるから。』

そう手を振って笑った典明に元気付けられた春茉は、勇気を振り絞った。

「……っ、はるな、です。
よろしくおねがいしますです!!」
「はーい、よく言えました!」

先生に撫でられながら、春茉は照れ臭そうに笑った。
撫でられていた手が離れると、今度は典明と春茉のトモダチが頭を撫でてくれる。
相変わらず、春茉のトモダチの翼は痛かったが、それも気にならないくらいに、春茉は嬉しかった。

「ちゃんと、いえたです!」
「うん、みてたよ!
はるなちゃん、いいこだね!」

そして、最後に典明からも頭を撫でられた。
同じ四歳だと言うのに、彼はすっかり兄のようだ。

「えへへ……。」

春茉が顔を真っ赤にしていると、その様子を見ていた他の園児達が、代わる代わる春茉の頭を撫でていく。
ワイワイと賑やかな園児達に囲まれる春茉を眺めながら、典明は少しつまらなそうに俯いていた。



******




「のりあきくん、おべんきょうおしえてほしいです!」
「……やだ。
ほかのひとにおしえてもらえばいいじゃないか。」
「……ダメ、です……?」

自己紹介も終わって、早速それぞれが勉強する時間になった。
二人一組になって勉強する方式なのだが、転入してきたばかりの春茉は、典明以外と組むことは考えられない。
だが、典明はそうは思わないらしく、そっぽを向いたまま、彼のトモダチの絵を描いている。

「……やだったらやだ。」

しかし、嫌だと言う割には、彼のトモダチはうねうねと春茉の腕に絡み付いている。

「みどりいろさんは、いっしょにいたいみたいですよー?」
「そんなこと……!」
「はるなちゃんっ、ボクといっしょにおべんきょうしよう!」
「…………っ!!
いやです!はるなのトモダチ……んぐっ!?」
「はるなちゃん、しーっ!!」

辛抱強く、典明に一緒に勉強しようと話し掛けていた春茉は、やって来た他の園児が、自分の大事なトモダチを踏んでいるのが見えた。
いくら触れないからとは言え、驚いたのか、トモダチは慌てたようにバタバタと飛び回っている。

トモダチを踏むヒトと一緒なんて嫌だ!

そう言おうとした春茉は、しかし典明に後ろから口を塞がれ、もごとごと言葉にならない声を発するだけ。
言おうとした事は、全く伝えられなかった。
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