常闇の光

□その瞳は
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「弥槻っ!」
「あっ、おいあんた!
近付けば奴に殺されるぞ!」


後ろからの制止に、シュヴァーンは内心笑いそうになった。


『殺されるぞ』なんて。
まるで俺が『生きている』みたいじゃないか…。

そんな様子に気付かずに、男は必死にシュヴァーンを引き留める。


「あいつは、昔自分の兄貴を殺したんだ!
悪いことは言わない、死にたくなければ…っ!」
「…実にありがたいが…、

俺は既に死んだ身だ。」


有無を言わせぬその言葉。
息を飲んだ男は、俺は止めたからな、とブツブツ言いながらもその手を離した。


「……シュヴァーンさん…。
何でここに…。」


傷口を押さえながら弥槻が口を開く。
周りにはまだ見知らぬ少女達が取り囲んでいた。

「…通してくれないか。」
「………嫌だと言ったら?」
「…力付くでも。」


シュヴァーンの冷たい瞳に射抜かれた彼女達が、1人、また1人と離れていく。
だが…。


「フン、あんたが近付く前にこいつを…。」
「非力なお嬢さんに手を上げたくは無いんだが?」
「馬鹿にしないで!
私は…っ!」
「シュヴァーンさん!」

手にしたハサミを振り上げ、少女が突然切りかかってきた。
悲痛な声をあげる弥槻。
血の付いたハサミを振り回す少女。
シュヴァーンは冷静に少女からハサミを叩き落とした。

「いたっ!」
「…そんな物を振り回すからだ。
弥槻、目を開けて傷を見せろ。」
「………嫌です。」


何が起こったか理解しきれていない少女を放置して、シュヴァーンは弥槻に視線を合わせる。
万一、目に傷が入っていたら、早急に治療しなければ失明しかねない。
そう思っての言葉だったが、弥槻は嫌々と首を降る。

「弥槻、目に傷が入っていたら…!」
「大丈夫ですから!」
「……そいつ、痣があるだけじゃなくてね…、右と左で瞳の色が違うんだよ。」
「………………っ。」


弥槻の肩がビクッと震えた。
その反応は、事実だと認める以外に意味を持たない。


「変な痣があって、オッドアイなんて、気持ち悪いじゃん…、気色悪いじゃん…っ!」
「……私だって…、好きでこうなった訳じゃない…っ!」
「…瞳の色が違うことが、そんなに重要か?」

睨み合ったまま始まった口論に、シュヴァーンが静かに水を差した。
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