常闇の光

□心の監獄
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「…とんだご高説だな。」
『……………っ!』
「…………シュヴァーンさん…?」
『な…っ、軽間さん?今誰か一緒にいるのかい?』

シュヴァーンの口からポロリと怒りが漏れた。
どうやら、怒りのあまりに、思ったことが口に出てしまっていたようだ。
慌てて口を塞いだがもう遅い。
呆けたような顔を晒す男に、唖然とした表情でこちらを見つめる弥槻の視線。


(…やってしまった…!)

静かに、という言い付けを破ったばかりか、どうやら更なる面倒事を引き起こしてしまったらしい。


『軽間さん!?
くそっ、学校には来ねぇ癖に!』

少なからず焦ったシュヴァーン以上に、男の方が混乱していた。
その状態で、何やら訳の分からない事を喚き始める。


『おい!誰かいるんだろ!?
アンタ保護者か?
保護者なら知ってるだろガキは学校に行くのが義務なんだよ!』
「保護者ではない。」
『だったら何で引きこもりのガキと一緒にいるんだよ!』

その顔に貼り付けていた仮面が取れれば、途端に弥槻を罵倒し始める。
相手が喚けば喚くほど、シュヴァーンの方は不思議と心が冷めていく。


「学校に行って、弥槻は何を学べる。」
『はぁ!?』

冷たい声でそう問えば、馬鹿のような声が返ってきた。
余りの馬鹿さ加減に呆れたシュヴァーンが沈黙すると、何を思ったのか1人でペラペラと喋りだす。

『あ、いや。一般的な歴史とか、将来必要となる知識を…。』
「そんなの学校に行かなくても学べます。」
『軽間、お前に言ってんじゃねぇんだわ。
一番大事な協調性!
これは学校に来なきゃ身に付かない。今の軽間さんには全く無いものだよねー?』


その証拠に空気を読めてねぇし?

そう誇らしげに言い切る男。
この瞬間、シュヴァーンはこいつが目の前にいなくて本当に良かったと思った。


「……学校に行っても、貴様が教育者では、弥槻は、何も学べないだろうな!」


怒りで震えるその拳。
シュヴァーンから発せられる怒り。
言葉も途切れ途切れで上手く話せない。


(…何熱くなってんだか…。)

冷たくこの状況を観察する自分を感じながらも、沸き上がる怒りが止まらない。

(…落ち着け…。)


深呼吸を一つ。
怒りはまだ収まらないが、少しだけ余裕が出来た気がする。
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