片翼の影
□十六ツ影
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カドスの喉笛を越え、弥槻達はマンタイクと言う街に辿り着いた。
砂漠の街の執政官に就いていたキュモールの懲りない行動は止まる事を知らず、ついに砂漠への準備をしないままに街の人を砂漠に放り出すまでに至っていた。
幼い兄妹に砂漠に連れていかれた両親の捜索を依頼された凛々の明星は、照り付ける太陽の光に顔をしかめる。
砂漠の中央部はに広がるのは、進むべき方向を見失ってしまいそうな陰一つない景色。
街の中も暑かったが、それとは比べ物にならない暑さのせいで、衣服が肌に貼り付きそうだ。
「……暑くない……、あつくない、……あつい……。」
「こりゃあ、準備無しで放り出されたらたまんねえな。
……大丈夫か?弥槻。」
熱にうなされた様にぶつぶつと呟く弥槻の様子に、手でわずかな影を作って辺りを見渡していたユーリが彼女を見下ろす。
声を掛けられて、ぼんやりとしていた弥槻はゆっくりと彼を見上げた。
「……あつくないです。」
「いや暑いんだろ……。」
「あのおっさん、準備無しでも平気そうよ。」
弥槻達がそんな会話をしている中、リタは眉間に皺を寄せながらそう言った。
視線の先では、軽快に先頭を歩くレイヴンがいる。
砂漠の暑さを感じさせないレイヴンの様子に、弥槻はどうしてそんなに元気なのだろうとぼんやり考えていた。
砂漠のオアシス