レプリカ編

□Episode66
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「そうだ。……ルーク、お前ローレライの鍵を受け取ってないのか?」

ジェイドの言葉に頷きながらも、ピオニーはルークに問い掛ける。
しかしルークは、自分の手を見て力無く首を振った。

「……おかしいですね。
ローレライは鍵を送ると言った。アッシュは既に鍵を持っているらしい。
ならルーク、あなたに送られた筈の鍵は何処にあるんです?」
「解剖してみる?」
「………………。」
「いっだ!?」

紫音の言葉に、呆れながらもしっかりと罰を与えたジェイドを咎める者は誰もおらず、アッシュを探すしか無い、という結論に落ち着いた。

「嫌な感じだわ……。
何かが起きているのは確かなのに、何が起きているのか、誰も状況を整理出来ていないなんて……。」

不安そうにうつ向き、そう呟いたティアに、ジェイドはそう悲観する事は無い、と微笑んだ。

「確定出来る事から潰して行けば、おのずと道は拓いていくはずです。
まずは、マルクト軍を襲ったキムラスカ兵が正規軍なのかどうか。
これは比較的容易に確認出来ます。」

まずは、出来る事から確実に。
そう言ったジェイドに、ピオニーも続いた。

「こちらも調査はさせる。
ジェイドと紫音はキムラスカの動向を確認後、アッシュを追え。
ガイラルディアは……、」
「俺も引き続き、ジェイド達に協力させてもらえませんか?」

ピオニーの言葉を遮り、ガイが一歩前に出た。
それを受けて、ピオニーが彼を値踏みするように見つめる。

「……幼なじみが心配か?」

その問い掛けには、かすかに温かみが含まれていた。
罰が悪そうに頭を掻きながらも頷くガイに、ピオニーは仕方ねぇなぁ、と言った風にしながらも、許可を出した。

「よし。……じゃあ、後は頼むぞ。」

最後に、一人一人の顔を順番に見渡しすと、ピオニーは謁見の間を後にした。
残された紫音達が、早速バチカルに向かおうとした時、不意にアニスが手を挙げる。

「私、イオン様にお手紙出してきますから、街の入り口で待っててくださーい!」

そう言うなり、パタパタと軽い足音と共に、アニスは謁見の間から出ていった。
その後ろ姿を、観察するように見ているのはジェイドだ。

「……。今更手紙……、ですか。」
「マメだねぇ。」

うんうん、と頷いていた紫音に、ジェイドは確認の視線を向ける。
それに気付かない訳無いだろうに、彼女はそう言えば、と手を叩いた。

「忘れてた。
ルーク、ティア、ポケモンの調子はどう?」

待ち合わせである街の入り口へ歩き始めたルーク達は、その問い掛けに目を丸くする。
ティアは問題無いわ、と答えてくれたが、 ルークの答えが芳しくない。
どうかしたの?と訊ねると、ルークはそっと懐からモンスターボールを取り出した。
中を覗き込めば、小さく丸まったパルキアが、怯えたような視線を向けている。

「……ボールから出しても、ずっとこの調子で……。」
「怯えきってる……。
うーん……、ちょっとこの子預かって良い?」

紫音の言葉に、ルークは任せて良いか?とホッと安堵したような表情になった。

「俺じゃどうしたら良いか分かんなかったし……。
ポケモンは紫音に任せるのが一番だからさ。」
「それは過大評価だよルーク。
ルークだからこの子任せたの。
私が預かるのは、ルギアに何で怯えてるのか聞き出してもらうためだよ。」
『俺はカウンセラーかよ。』

ルギアの呆れた言葉に、通訳が必要でしょー?と紫音は肩を竦めた。
パルキアの怯えを取り除くには、まずは原因を理解しない事には始まらない。
それもそうだ、と皆が頷くなか、紫音は一人うつ向いた。

「……でも、ちょうど良かった。」

ボソリと口の中で呟いた言葉。

「…………え?」
「なーんでーもなーい。」

聞かれてしまったのか、ルークがきょとんとして聞き返した。
そんな彼は、さぁ、アニスに怒られる前に行こうよ!と紫音に背中を押され、ルークは渋々グランコクマの入り口へと足を向けた。
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