幼少期編
□Episode04
3ページ/3ページ
「………………。」
「……はるなちゃん、だいじょうぶ……?」
「……トモダチ、ふんだ……。」
「だって、僕たちにしかみえないんだもん……。」
「……ビックリしてたもん……。」
「うん、しってるよ。
みてたからね。」
「どうして、みんな、わかって、くれないの……?」
トモダチを踏まれた、と泣き出した春茉だったが、もちろん春茉と典明以外には見えないトモダチの事だ。
先生も、園児も、その場にいた全員が驚くなか、典明と緑色のトモダチだけが、春茉達を落ち着かせようと手を尽くしてくれたのだ。
その最中、トモダチを踏んだ園児が春茉に言った。
『わかったぞ!
オマエもソイツみたいに、ユーレイがみえるんだろ!』
ちがう、ユーレイじゃない。
何を言っても、春茉の言葉は聞き入れて貰えなかった。
最初の目的通り、典明とペアになることは出来たものの、春茉の気分は晴れない。
「……はるなちゃん。」
「………………。」
「僕が、いるから。
ダイジョウブだよ。」
「……のりあきくん……。」
「ほらっ!
おべんきょうしなきゃ、おこられちゃうよ。」
「……うん。」
さっきまで春茉がそうしていたように、典明は笑顔で根気強く励ましてくれた。
「僕とみどりのトモダチは、ずーっとはるなちゃんのミカタだから。」
「……エヘヘ、ありがとう。」
そう、他の人に見えなくても、春茉のすぐ側に、春茉達を理解してくれる人がいる。
緑色のトモダチが、優しく撫で続けてくれたお陰で、春茉のトモダチも、ようやく落ち着きを取り戻してきた。
それを確認した春茉は、トモダチをそっと呼び戻し、典明に笑った。
「のりあきくんがいてくれて、よかったです!」
「僕も、はるなちゃんがひっこしてきてくれて、よかった。」
自分達だけの秘密が、また一つ強固になった二人は、他の園児に馴染もうとする事はせず、家でも、幼稚園でも、二人で過ごすようになったのだった。