幼少期編

□Episode02
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「……むむ、みどりいろさん、はやくえらぶです。」
「……もうちょっとまってほしいみたいだよ?」
「……あっ。」
「あーぁ、はるなちゃんのまけだね。」
「……わたしのサクランボ……。」
「ちがうよ、まけたからはるなちゃんのサクランボじゃないよ。」

皿に乗せられた最後のサクランボを口に入れ、嬉しそうに舌で転がす典明。
おやつとして運ばれてきたサクランボを賭けて、先ほどからずっとトランプで遊んでいた三人だったが、どう足掻いても春茉は典明と緑色に勝てない。

「ぜったいずるしてるー!」
「してない。
はるなちゃんがわかりやすいんだもん!!」
「うそだーっ!」
「うわっ!?
はるなちゃんやめて!!」

手近にあったクッションを投げ付けるも、緑色のトモダチにキャッチされ、典明には届かない。

「このっ、このこのこのこの!!」
「うわわ!?
あぶないよはるなちゃ……、いたっ!?」

漫画、ゲーム、人形など、手当たり次第に投げ付けていると、遂にその内の一つが典明の額に命中した。
しかし、当たった事に喜んだのも束の間。

「……いたいよはるなちゃん……。」

ゆらりと立ち上がった典明。
彼の傍らには、緑色のトモダチが佇んでいる。

「いたかったんだーっ!
このーっ!!」
「ひゃあぁぁぁあっ!?」

ガバッと音を立てて、緑色のトモダチが春茉を布団で包み込んだ。
その勢いに耐えきれず、春茉はそのまま尻餅をついてしまった。

「いったーい!!」
「あっ!ご、ごめんね。
やりすぎちゃった……。」
「のりあきくんのバカーっ!!」
「なかないで、僕が、わるかった、から……!!」

泣き出した春茉につられて、典明の目にも涙が浮かぶ。
そんな二人に、トモダチも慌てたように周りをうろうろし始めた。
典明のトモダチは、宥めるように二人の頭を交互に撫で、春茉のトモダチは泣き出した二人の涙を、その翼で拭き取ろうと躍起になっている。

「……はるなちゃんのトモダチ、いたいよ……。」
「……うん、わたしもいたい……。
のりあきくんのトモダチはやさしいのに。」
「はるなちゃんのトモダチだって、やさしいよ。」
「……ありがとう?」

ごしごしとした翼の感触に気を削がれたのか、二人はどちらからともなく泣き止んだ。
まだ目が赤い二人だが、部屋の散らかり様を見て、顔を見合わせる。

「……おかたづけ、しなきゃです。」
「……うん、おこられちゃう。」
「…………ごめんなさい。」
「うぅん。僕も、ごめんね。」

仲直りをした二人は、その後、騒ぎを聞き付けた典明の母親に、優しく注意されたのだった。
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