幼少期編

□Episode01
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「わたしとおそろいです!!」
「フフ、そうだね。おそろいだ。」

嬉しさのあまり、春茉は男の子に駆け寄った。
緑色の彼と握手もした。
春茉のトモダチは、男の子の頭が気に入ったらしく、そこから動こうとしない。

二人でしばらくお喋りしていると、遠くから春茉を呼ぶ声が聞こえてくる。

母親だ。

「もうっ、座ってなさいって言ったでしょ!」
「……ごめんなさい。
でもっ、おともだちができました!」
「……わっ。」

男の子の手を握って、新しい友達を紹介すれば、母親は困ったような、呆れたような苦笑いを浮かべる。

「おそろいなんですよー!」
「……まったくもう。
遊んでくれてたのね。ありがとう。」
「……いえ、僕は……。」
「おにいちゃん、またあそぼう!!」
「……うん、僕もまた遊びたいな。」

ぎゅっと手を握って、二人はにっこりと笑い合う。

「バイバイです!……えっと、」

握っていた手を離し、手を振るときになって、ようやく春茉は、男の子の名前を知らないことに気付いた。
彼もそれに気付いたのだろう。

「……のりあき。」
「えっ?」
「かきょういんのりあき!」

かきょういんのりあき。
それが、彼の名前だと分かるまで、しばらく時間が掛かった。

「……のりあきくん!
わたしね、はるなっていうの!」
「はるなちゃん、だね。
はるなちゃん、またあそぼう!」
「うんっ!!」

そう手を振り合って、春茉はのりあきに背を向けた。
母親に手を引かれながら、初めて出来たおともだちの事を、ずっと母親に話して聞かせた。

「……ふふ、良かったわね。」
「はいです!」
「この辺の子だといいわね。」
「きっとすぐにあえるきがするです!」

そうは言ったものの。

「あっ。」「……あっ。」

まさか、次の日に再会することになろうとは、まったく思わなかったが。
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