魔核泥棒編

□第九羽
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「おい、弥槻。」
「あ、はい。何でしょう?」

レイヴンがダングレストを離れて、既に二ヶ月近く経っていた。
そろそろ帰ってくるのでは、と毎日期待している弥槻は、日に日に口数も少なくなっていることも自覚していた。

「あの馬鹿が帰ってくる前に、一人で腕試し行ってこい。」
「…………え?」
「一人で無事に帰ってこれりゃあ、俺も安心してあの馬鹿と一緒に放り出せる。」
「放り出すって……。」

苦笑いを溢す弥槻に、ドンは豪快に笑った。

「お前ぇなら出来る!
ほら、行ってこい!」
「………っ!
い、行ってきます…!」

容赦なく背中を叩かれ、涙目になりながらも、弥槻は笑顔でダングレストの橋を渡る。
この軽い腕試しが、弥槻の物語を大きく変える事も知らず……―。



陰鬱の森
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