魔核泥棒編
□第一羽
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「…時間だ。
お疲れ様、軽間さん。
もう帰っていいよ。」
「…はい、お先に失礼します。」
定時になった途端、作業がどれ程途中であろうと、帰ることを強要される。
その中途半端な仕事を同僚が片付けてくれるわけでもなく、翌日に繰り越されるだけ。
ー…そんな状況にも、もう慣れた。
私を見る奇異の視線も、根拠の無い中傷も、いつもの事。
だから、かつてありのままの私を受け入れてくれた彼が恋しかった。
そんな彼と別れてから、もう10年。
『信じていれば、また会える。』
その言葉だけを糧に生きてきた私も、そろそろ限界だった。
「……何時になれば会えるんですか…?」
ー…シュヴァーンさん…。
ロケットペンダントを握り締めて呟いた言葉は、夕暮れの街の雑踏に消えた。
喚び声