Sacred music・・・and dunce?

□第四話
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「臨也さん、やっぱり私、貴方とは一緒に居られません。」
私がそう告げると、臨也は初めキョトンとした顔で此方を見た。
「どうして?悪い話じゃないと思うけど。」
シズちゃんに会う際に着替えたファーコートは綺麗に畳んで、ベッドの隅に置いてある。
やっぱり、違うんだよな…
本人じゃ、無い。
例え臨也があの人に似ていた所で、出した結果は同じなのだろうけど。
「傷付けちゃいけないんだ。大切な物ですから。」
私は自虐的な笑みを臨也に向けた。
臨也を物扱いしたのはいけない事だが、私が大切だと想っているのに代わりは無い。
大切だからこそ、愛してるからこそ。
私の所為で傷付かないで欲しい。
もう、独りで逃げ続けようと決めたから。

「櫂莉…君は何に悩んでいるんだい?それは俺には叶える事が出来ない望み事かな?」
臨也は扇情的に私の顎に手を滑らせた。
が、私は戸惑う事なく言い放つ。
「貴方の事が、大好きでした。」
臨也は一瞬呆気に取られたが、すぐに笑いながら私の髪の毛を弄び始めた。
「じゃあ、尚更…「良くなんてない…私は殺戮兵器なんです。機関が動いたら…私は貴方まで殺し兼ねません望まなくとも…です」
臨也は尚も私の毛先を弄ぶのを止めない。
私は俯き加減に言葉を放ち続ける。
「だから…すみません。助けて下さった事のお礼なら、何でも致します…でも、これ以上深い関わりは持てません…。」
売られて仕舞うのだろうか。
まあ、それでも良いかもしれない。

誰かを傷付けたく無いだけ。でも、自殺なんてしても作り替えられるだけ…。

ならいっそ、人質の類いになってしまえば問題は無い。
もしかしたら、諦めてくれるかもしれない。
そう思えた。
でも、所詮そんなものは幻想で。
どう足掻いても逃げ切れない事位解っていたのに。
「じゃあ、君はどうしたい?」
臨也が微笑んだ。

変わらない。

私の愛した日々也と、同じ。

真っ更な笑顔を此方に向ける。

そんなの…決まってるじゃないか。

「日々也に…逢いたい…」
もうあれから何年たったろう。
今でも元気で、笑んでいるのだろうか?

「ユートピアに…帰りたいんです…」

そんな事を言われてもどうしようもないだろう。
解っていた。だからこそ。
自分が狂っていると思われたって良い。
もう…独りになりたかった。

「じゃあ…悪いけど、寝ててくれるかな?」
眼前に広がるハンカチ。
こんなもの、効く筈無いのに。
私は、システムを停止させた。
一生止まってくれれば良いのに…
私は意識を喪った。
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