☆絆
□消えた日常
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「面ーッ!!」
パンッと響く竹刀の音
古い防具と汗の香り
少年が振り下ろした竹刀は相手の面には当たらず、竹刀によって止められる。そして
「胴っ!!」
竹刀を弾き返しその勢いで少年の脇腹に突っ込んでくる相手の竹刀。
それは、見事に彼の胴に命中した。
そして、先生の持っていた赤旗が、上がった。
「赤、中野!!…原田ー…無理に面を取りに行くなって言ってんだろー??」
「…すいません」
「剣道は面だけじゃなくて、臨機応変に打つ場所を考えるのが大事なんだって!!中学に入って1年半経ってるんだから少しは学習しろ!!」
「…はい…」
「わかったらまた並べ。」
「…はい…」
一礼して並び直す。
ここ、時ノ葉学園は、歴史が古く色々な面で良い成績を残してきたことで知られている。
勉学、部活、近所との関係も良好で一目置かれている学校なのだ。
中でも、剣道部と男女バスケットボール部は毎年全国大会で賞をとっていて、期待を裏切らないためにも教師たちは厳しい指導を行っている。
最後尾に並ぶと前にいた北島 蕉がニヤニヤしながら話しかけてくる。
「悠翔、いつも怒られるなwww」
「うるせーよ、蕉…」
普通はこんな言い方をされるとちょっとむかついたりするのだが、蕉に言われてもそんなに嫌な感じはしない。
悪意があるわけじゃないってことがわかってるからかな…??
「見ろよ、お前と怜の試合、あいつらずっと見てたぞ??
お前が怒られてるとこもなwww」
蕉が指を差す方をみるとバスケ部の女子が何人かいた。
その女子軍の中で悠翔は自然と端にいる女子に目がいった。
桜木 乃々花…同じクラスでかわいくて、学年でも人気の女の子。
見られてたのか…格好悪いな…
「あ、俺の番だ」
そう言って蕉は歩きだした。
「蕉ー!!絶対勝ってね??」
女子軍の中心にいたさらさらした黒髪が特徴的な女子、崎坂 夢月が声をかける。
「おう、任せろ」
蕉もひょいと片手をあげて返事をする。
この2人は付き合ってるわけではないのだが、幼なじみか何かで同じクラスでとても仲が良い。
俺と蕉はクラスは違うが、部内では一番仲が良い。たまに蕉のクラスに行くと崎坂と話してたりするのをよく見る。
「胴!!」
蕉が相手に突っ込んでいく。
蕉の竹刀は簡単に止められたが面ががら空きだ。作戦だったのだ。
「面っっ!!」
「白、北島!!…お前、上手くなったな」
「蕉すごい!!」
「へへっ」