☆絆
□消えた日常
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「―――っ!?」
中から出てきたのは、
「お前ら何してんの??」
不審者をみるような目でこっちを見る、中野 怜だった。
「はぁぁぁー…」
そこにいた全員が脱力ししゃがみこむ。
「何してんのはこっちの台詞だ!!」
俺は半ばキレ気味で叫んだ。
「いや…明かりが見えたから誰かいるのかと思って…
下校時間近いし知り合いだったら注意しようと倉庫に入ったら扉閉まるし電気消えるし…
焦ったぜ…」
「じ、じゃあさっきの音も??」
「音??俺がボールかごを蹴った音か??」
「多分…それ…」
みんな結構本気で怖がっていたから余計バカらしくなって笑うことすらできなかった。
「びっくりしたなぁ、もう!!ね、夢月」
「…」
「夢月??」
いつも明るい崎坂が清水の言葉に無反応なんて珍しい。
そんな怖かったのかな??
そんなことを考えながら2人の方を見る。
崎坂は震える自分の体を抱き締めるようにして座っていた。
下を向いていて長い髪が顔にかかり、顔は見えない。
「夢月…??」
清水はこんな反応は初めてのようで、驚きながら崎坂の肩を揺らす。
「お…おい、夢月??」
蕉も一緒に崎坂の隣に座って顔を覗き込む。
だが崎坂の震えはひどくなるばかりで、みんなどうすればいいのかわからず、俺と蕉と清水はひたすら崎坂の名前を呼ぶ。
「夢月!?」
「崎坂!!」
「夢月っっ!!」
しばらく名前を呼び続けた。
すると崎坂はいきなり立ち上がった。
崎坂の周りにいた俺と蕉と清水は崎坂が立ち上がった反動で後ろに倒れ、尻餅をつく。
「――っ、夢月!!」
蕉が叫ぶが崎坂は聞こえないようでそのまま倉庫の方へ歩いていく。
俺はすぐに立ち上がり崎坂が扉の取っ手に手をかけたとき、崎坂の左手を掴んだ。
「崎坂、どうしたんだよ!?おいっ!!」
と叫びながら引っ張る。
だけど俺が全力で引っ張っても足は全く動かない。
大人でも中学生の俺がひっぱったらよろけるはずだ。
なのに崎坂は地面に根をはっているように動かなかった。
蕉と清水も後から追い付いて来ていたらしいが驚いて立ち止まっている。
他の奴らは突然のことに放心状態だ。
不意に崎坂が口を開いた。
「…でる」
「さ、崎坂!?」
「呼んでる…」
そう言って取っ手にかけていた手を動かした。
その瞬間
パァッ――…
と扉から光が漏れていく。
扉が全開になると辺りは光に包まれ、目を開けていられなくなった。