留伊

□なごり雪〜伊作編
2ページ/4ページ

仙蔵との話し聞こえちゃったかなぁ? でも聞こえなかったかもしれないし…
何もなかった振りをしよう。どうせもうすぐで卒業なんだから。

しかし、衝立の向こうから呼ぶ声が聞こえる。

「…伊作、もう寝た?」

…やばい…

僕は背中を向けて寝た振りをした。

「起きてるだろ」
留三郎に、手首を掴まれた。
「ちょっと、やめてよ」

「…お前が、ずっと好きなんだ」

留三郎は低い声で囁く。
僕は目を逸らす。

「昼間、聞いてたでしょ、仙蔵との話。あきれただろ。もう、僕のことなんかほっといて」

僕は泣きそうな顔をしていたのかもしれない。
こめかみに留三郎の唇が触れた。

「伊作が、誰のことを好きでもいいんだ。土井先生の身替わりでいい。
俺は、伊作のことが好きだから…」

「ばっかじゃないの?
僕はずるい奴なんだから。
留三郎の気持ち知ってて利用してたんだから」

「伊作が忘れられるまで、待ってるから、ずっと」

「そんな、…いつまでかかるかわかんないじゃん」

「それでもいい」
「…ばかだよ…」

セリフの最後は留三郎のキスに掻き消された。

「ねぇ、手痛い。…離して。逃げないから」
「…うん」

その夜、僕は逃げなかった。

留三郎はやさしく、だけど激しく求めてきた。
何年も待たせたからしょうがないかな。

朝、外はもう明るくなったが留三郎は横でまだ寝ている。
目覚めてどんな顔をしたらいいかもわからないので、そっと部屋から出ていく。

この時間の保健室は誰もこない。
明るいところで見てみると、体のあちこちにゆうべのキスマークがついている。

もう、付けすぎだろ。隠すの大変じゃん。夏でなくてよかった。

ゆうべを思い出すと、恥ずかしく、体が熱くなってきた。
そのまま身を横たえ、自分自身を触ってみる。

んっ、ああっ…

ゆうべのほてりの続きで驚くほど敏感になっていた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ