土井利
□京扇子
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珍しい異国の赤い色の酒。京らしい上品な食事。
だが、出されたものに口は付けない。 何が入っているかわからないからね。
「そなたは変わったのぅ」
「何か?」
「美しゅうなった」
「…そうですか」
「そなたが戦場に咲く一輪の花なら咲かしてやって置いても良いが、誰かに手折られたとあらば、そのままにしては置けぬ」
…何を言ってるんだこのお公家様は…
ー失礼します。と、引き上げようとしたが、声がでない。
!
ぎっと睨み付ける。
「ようやく効いてきたか?さすが毒には強いのぅ」
指が震え、足も立たない。
「まこと、良い目をしておる」
「警戒して何も口にしてなかったのに、残念であったな。葡萄酒には毒は入っておらぬから味を見てみればよかったのに」
くそっ、さっきの扇子に…
「まことに、愛を知らぬ頃と比べて、より色香が増してきた」
ゆらり、奴が近付いてくる。逃げられないー!
ー嫌だっ!
唇を奪われたが、精一杯の抵抗で噛み切ってやった。
どさっ
さっと黒い影がよぎったと思ったら、公家が倒れ込んだ。
ー土井先生!
「全くもう!危ないじゃないか!」
ー助けに来てくれた!涙がぽろぽろ出て来た。
「ほら、帰るぞ」
ひょいっと抱き上げられた。
「むかつくからこいつ、もう一つ蹴り入れとこう」
そして姫抱きされたまま屋敷を去った。