留伊
□Bon Voyage!
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晴れた青空に、道の向こうに湧きあがる入道雲。
今日の授業兼忍務は港町に行って情報を仕入てきて、風魔の錫高野与四郎から手紙を受け取るという簡単なものだった。しかも6年は組ペア、すなわち留三郎と伊作の二人で。
すっかりバカンス気分を楽しんでいたのだが、取るに足らないことでケンカをしてしまった。
「も〜!留三郎なんか知らない!」
「あわてて落とし穴にはまっても助けねーからな!」
港町の賑わいの中を、伊作はものすごい勢いで闊歩していた。
ここまでならいつものことなのだが、今日はタイミングが悪かった。
落ち合う予定の場所に与四郎が現れた。
「よお!久しぶり!」
伊作は与四郎をぎっと見つめる。
「…なんだよ」
与四郎は伊作のただならぬ勢いにたじろぐ。
そして、船の出港の合図が鳴った。
「もういい!僕、与四郎と浮気するから!」
「はぁ!?」
状況がつかめない与四郎の手を引き、行き先も分からない、今出港しようとしている船に乗り込んだ。
「ちょっと待て、どこ行くんだよ! 伊作!」
「協栄丸さん!早く船出して!」
港で叫ぶ留三郎にあかんべをして、伊作と与四郎を乗せた船は出港した。