留伊
□園田村、その後
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食満留三郎をはじめとした用具委員会と保健委員会の面々は、骨折した伊作を乗せて大八車を引いて学園に向かっていた。
なごやかに歩みを進めながら乱太郎が言った。
「先生達が言ってたけど、今回私達が勝てたのは、タソガレドキ軍の忍者隊が戦に加わらなかったからなんだって。伊作先輩のおかげなんだって」
留三郎の歩みが急に止まり、大八車はがたんとゆれた。
「伊作! お前代償に、か、体とか要求されてないだろーな!」
伊作の顔がまっ赤に染まる。
「なっ、なんて発想してるの!
ってゆーか子供の前でなんて事言ってんの!
そんなことあるわけないでしょーが!」
忍たま達はひそひそと囁く。
「乱太郎、僕達どういう反応すればいいの?」
「ばかだなぁ、聞こえないふりすればいいんだよ。いつものことじゃないか…」
大八車は峠の茶屋にさしかかった。
「ようし、少し休憩していくか」
「わーい」
忍たま達はおだんご目掛けて駆けだした。
「伊作、おいで」
「ありがと」
一人で大八車から降りられない伊作に、留三郎が両手を差し延べる。
そして、そのまま姫抱きにする。
「これは嫌だ」
美しい眉間にしわを寄せ唇を尖らせて、留三郎を睨む。
「何で?」
「…子供達が見てるでしょ!もう!
肩だけ貸してくれればいいから」
勝利の後にみんなで食べたおだんごは美味しかった。
「さっきはごめんね」
「足が治るまでは不便だろうから、何か助けて欲しいことがあったら言えよ」
首を傾げて覗き込む。
「足が治ったらだめ?」
悪戯っ子のようにクスクスと笑い、唇を触れるだけの口付けをする。
「っか野郎ー… 子供達が見てるだろ…」
「見てない、見てない」
またも忍たま達はヒソヒソとつぶやく。
「こんな時はどうすればいいのかな?」
「馬鹿だなー、見てない振りすればいいんだよ。いつものことじゃないか」