留伊

□櫻の園
1ページ/5ページ

これはまだ、俺と文次郎が伊作をめぐってライバルごっこをしていた時のこと、あの頃の俺達はライバルごっこ自体を楽しんでいた。多分。
その頃の、雑渡昆奈門による伊作誘拐事件の顛末である。

いつものように文次郎は保健室を訪れた。
「あれ、左近、伊作は?」
「善法寺先輩なら雑渡昆奈門と外に出ましたよ」

「何ィ?! 雑渡昆奈門だぁ?!」
びくぅ、と左近は文次郎の勢いに怯え、しどろもどろに答えた。

「は、はい。急に雑渡昆奈門が現れて…」
「伊作を連れ去って行ったんだな!」

「いや、あの…」
「こうしちゃおれん!」
「あ、潮江先輩、待って…」

という左近の話しも聞かず、文次郎はかけ去って行った。

真実はこうだ。確かに雑渡昆奈門は急に現れた。前回は伊作と左近にトイペを投げつけられたが、ドクタケ城の暗号文件で1年は組を助けてくれたことから今回は和やかに迎えてもらえた。

「あ、雑渡昆奈門さんこんにちは」
「やあ、伊作君こんにちは」
「この間はどうもありがとうございました」
「いや、伊作君に喜んでもらえたならよかったよ」
「今日は手当をするようなお怪我でもありますか」

「いや、大丈夫。君の方は私が何かお助けできることでもあるかな?」

「う〜ん、とくにないですけど… いい季節だから櫻が見に行きたいかなぁ…」
「そうか、では」

と、合意の上で、というか伊作の提案で花見に出掛けて行ったらしい。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ