留伊

□なごり雪〜伊作編
1ページ/4ページ

忍術学園6年生で誰が1番嫌な奴かと聞かれたら、俺、立花仙蔵は間違いなくこいつの名前を挙げる。

ー善法寺伊作

博愛主義なんてとんでもない。同級生二人、食満留三郎と潮江文次郎がこいつをめぐって無益な争いを繰り広げる中、素知らぬ様子で笑顔を振りまく、こいつを小悪魔と呼ばず誰を呼ぼう。

「へーえ、仙蔵はキスだけで満足しちゃうんだ」

卒業を控え、授業も後わずかになってきた。授業の火器を倉庫に片付けながら、奴は言う。

「うるさい。お前よりいいと思うぞ。土井先生に何も言えてないくせに」
「僕のことはほっといてくれない」

そう、奴の狙いは土井先生。
「まあ、何かしたら利吉さんに殺されるけどね。間違いなく」

相思相愛のそれぞれに恋してしまった俺達は、お互いに思いの持って行き場もなく、切なく卒業を迎える。

「それより、あいつらなんとかしてやれよ」
「あいつらって?」
「留三郎と文次郎」

「…ああ…」

「かわいそうだろ。はっきりさせなきゃ」
「だって何も言われてないものを僕に何しろってのさ」

「お前の横で一人悶々と夜を我慢して過ごしたり、予算配分で色をつけたり、二人ともずいぶんがんばってるじゃないか」

「…惚れた者の負けでしょ。恋愛なんて。
それを僕がどうこうする必要なんてないし」
「…お前顔はかわいいくせに本当に性格悪いな…。
土井先生がどうにもならないから、やつらをからかって楽しんでるんだろ」

がたっ

物音がして、走り去る陰が見えた。

「…あれ、留三郎じゃね?」
「まず、聞かれたかな?」

「まずいの?別に構わないんじゃなかったっけ?」
にやりと微笑みながら言う。

「お前も嫌な奴だな。…構わないよ。別に」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ