留伊

□masquerade
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 僕のお気に入り、6年生の伊作先輩。 年上だけど、かわいくて優しいんだ。 先輩が笑うと花がこぼれるみたい。それで保健室に来た皆を優しく手当してくれる。

 僕は伊作先輩を手に入れる。貴方の弱点に巧みに入り込んで。そう、優しい貴方は弱者には弱い。
 僕は何の振りだってできる。だって変装が得意技だから。

「失礼します」
 僕は伊作先輩を見つめる。
「…鉢屋、のほうだね?」
「正解です。なんでわかったんですか?」
「何となく。 どうしたの? また眠れないの?」
「はい」
「薬に頼るのは良くないよ。僕でよかったら悩み事話してみない?」
「う〜ん、そんなにたいしたことないんですけど… でも、先輩の顔みたら少し元気が出て来ました」
「そう。 よかった」
「じゃ、おやすみなさい」
「おやすみ」

 少しずつ、貴方の心に入り込む。
 貴方の周りには僕の敵が多い。潮江先輩とか、食満先輩とか。

「伊作、最近保健室に5年生の鉢屋三郎が来てるようだが」
「うん。眠れないんだって」
「あいつ、危なくないか?お前を見る目が変だぞ」
「やだなぁ、留三郎。考え過ぎだよ」
「眠れないって言われて同情してるかもしれんが、気をつけろよ」

 今晩、伊作先輩は保健委員の当直で保健室で泊まる。

「こんばんは、伊作先輩」
「どうしたの? また調子悪い?」
「いえ、今日は遊びに来ました」
「そう、元気ならいいけど」
「お茶飲みたいな
「しょうがないなぁ。今入れてあげるよ」
 伊作先輩はこぽこぽとお茶を入れてくれた。

「わぁ、おいしい 伊作先輩ありがとう」
「どういたしまして。本当においしそうに飲むね」
「はい。伊作先輩がいれてくれたお茶だからおいしいです」

「…ん…なんか眠い…」
「おやすみなさい、伊作先輩…」

僕は計画通りにこのかわいい人に辿り着いた。
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