留伊

□共犯
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これは、俺達が4年生だった頃の話。3年生でと比べて授業も難しくなるし、委員会等でも重要な役割を担うようになる。いつまでも子供ではないと見做される年齢だ。

それは別の側面もある。忍術学園では魔の4年と言われていて、ちょっとかわいかったり綺麗だったりする生徒は上級生の好色の餌食にされる。俺達の代は伊作と仙蔵だった。

不運で有名な伊作はよく落とし穴にはまって帰って来なかった。あの日もなかなか部屋に帰るのが遅かったので、そろそろ探しに行こうかと思っていた。

すると、聞いたこともないような伊作の叫び声が聞こえたので、声がした武器倉庫に、文次郎、仙蔵と駆け付けた。

そこで見たものは、血だらけの棒手裏剣を握りしめ、恐怖に怯える伊作。上着ははぎとられ、殴られた跡もある。側には、血だらけで倒れている上級生。

「伊作、しっかりしろ!」

俺は棒手裏剣を伊作の手から離し、両肩を掴んでゆするが、伊作は取り乱したまま、うわ言のようにつぶやく。 仙蔵が上級生の脈を調べた。

「大丈夫だ。死んでない」

文次郎が新野先生を連れてきた。新野先生は止血等の手当をした。

「出血多量による貧血だね」
「伊作君、私だ。わかるかい?」
「…に、新野先生…」
「もう大丈夫だ。大丈夫だから」

新野先生は伊作に精神安定剤と睡眠剤を飲ませた。

毎日の授業では戦闘の訓練を行っていたが、その時はまだ俺達は誰も人を殺したことはなかった。結局助かったとしても、初めての人を殺した動揺、そして犯されかけた恐怖を味わったのが伊作であったことが、俺達にとってショックだった。
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