留伊

□保健室に行こう!
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保健室へと続く廊下を一人の男が歩いていた。男の名は潮江文次郎。

廊下の反対側からやはり保健室へ向けてもう一人の男が歩いて来た。男の名は食満留三郎。

男と男は目が合うとお互いを睨みつけた。

「何処へ行くんだ」

「保健室だ。 貴様こそ何処へ行く」

「保健室だ。」

「俺が先だ」

「いや俺だ」

保健室の扉が開いた。

「うるさい! 一体何?!」

「伊作

二人の声が揃う。

「何って、手当して貰おうと」

「見るからに元気そうだけど?」

「俺はあひるさんボート修理してたら手が滑って金鎚で指を打ってしまったんだ。」

「文次郎は?」

「俺は筋トレ中に肉離れ」

「じゃ、二人とも後回し」

「え〜!」

「君達よりも百合子が手入れ中に暴発した田村三木ヱ門とか、綾部喜八郎の落とし穴に落ちて足をくじいた保健委員会の川西左近とか、食べ過ぎでお腹を壊したしんべえとかの方が重症なの。順番がまわってくるまで廊下で待ってて」

 ぴしゃりと扉が閉められた。

 やり取りを聞いて校医の新野が声を掛ける。

「伊作君、中で待っててもらってもいいよ」

「新野先生、つけ上がりますから廊下で十分です。 怪我人の横で騒がれても迷惑ですし」
あらら取り付くしまもない、と新野は思った。

「ねぇ、何事?」

 左近は三木ヱ門に耳打ちする。

「これが有名な潮江先輩と食満先輩の伊作先輩詣でですよ」




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