文三木、文仙、綾三木

□三木の乱
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 4月が来て僕は4年生になった。会計委員会でも委員長の潮江先輩の次に年長だから、いろいろ後輩に頼られることも多く充実している。

「田村先輩、ちょっとここの計算がおかしいんですけど…」
「そうだね、潮江先輩に相談してみようか」
「え〜!いやです。怖いです〜」
「何いってるんだ。大丈夫だよ。一緒に言ってやるから」

 いつもこんな具合で、潮江先輩は怖がられているので、僕がフォローすることが多い。本当はそんなに怖くないんだけどね。

「さぁ、今日も遅くなったから終わりにするか!」
「はい」
「気をつけて帰れよ」

 会計委員会の今日の活動も終わり。みんな忍たま長屋に帰っていく。

 僕は遅くなってしまったのを心配していた。もちろん夜のおばけが怖いわけではない。最近物影からじっと見られているような変な感じがするのだ。

 忍たま長屋までには人気のない倉庫がある。そのまえを通りかかったとき、背後からつかみ掛かかられ、手で口を塞がれ、中に連れ込まれた。僕は必死で抵抗した。肘鉄を食らわし、指にかじりついた。しかし、体の大きい上級生には敵わなかった。壁に押し付けられ、上着を剥ぎ取られた。

 その時、倉庫の扉が開き、人が入ってきた。

「おい、人のものに汚い手を出すな!」

 この声、潮江先輩だ!

「チキショウ!」

 上級生は逃げて行った。
 潮江先輩と僕は会計委員長と委員という以外の関係はない。

 咄嗟の嘘で助けてくれたのだ。


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