鉢伊、鉢雷
□part of Me
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side:raizo
胸騒ぎとともに眠りについた夜更け
とても悲しい夢を見たのを覚えている
翌朝、部屋に血だらけの忍服で取り乱した久々知が現れ、夢ではなかったことを知った。
−三郎は二度と手の届かない遠い所に行ってしまった。
あれは本来、僕に与えられた忍務だった。竹谷と久々知と共に、ある城に忍び込み密書を奪う忍務。
あの日は、やたらと蝉がうるさくて、うだるような暑さと湿度のためか頭痛と発熱で体調がすぐれなかった。しかし、自分でやり遂げるつもりだったのだ。それなのに、三郎は自分が代わりに行くと言った。
「同じ顔なんだから判りゃしないって」
「そういうことじゃない! 僕はちゃんと自分でやりたいんだって」
「無理すんなよ。体がなおってからいくらでも忍務なんかできるさ」
三郎はいつも僕にやさしくて、だけど僕はいつも庇ってもらっている自分が嫌で。 あの日も必要以上に三郎にわがままをぶつけていた。
「保護者面しないでよ!ちょっと調子が悪くても僕は自分で忍務こなせるんだから!」
三郎は、はいはいと困った顔をして肩を竦めた。
それから急に振り返ってキスをしたと思ったら…
「何するっ… ちょっ…やだっ…」
侵入してきた舌で無理矢理薬を飲まされ、そのまま意識が無くなってしまった。
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