鉢伊、鉢雷

□木守り
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木守り
−柿の収穫の後にわざと木に一つだけ残された柿の実のこと−
それは烏などの悪戯から柿の幹を守る為に、己が朽ちるまで、幹を守り続ける。
僕は三郎の木守りになりたかった。

他人と自分を傷つけることでしか、自分を守れない三郎。

僕はただ三郎を守りたかった。



最近、気になる色街の噂話−この世の者じゃないぐらい美しい男唱がいる。唄も踊りも言うことないが、機嫌を損ねると斬られるという−

 近頃、同室の三郎は夜出掛けて行って朝方まで帰ってこない。
 今夜も外出しようとしている。

「何処行くんだよ」

出て行こうとする三郎に、雷蔵は声をかけた。

「関係ねぇだろ」

三郎はぶっきらぼうに答えた。
雷蔵は気になっていた事を声に出した。

「…変な噂話って三郎のことじゃないの?」

「噂?」

「い、色街の…」

「何で?」

「毎晩出掛けてるし、脂粉の匂いさせて帰ってくるじゃないか…」

「だったらどう?」

落ち着いて否定もしない三郎に、雷蔵の方が声を震わせて聞いた。

「…客を、斬ったの?」

「斬らねぇよ。しつこい奴がいたから脅してやっただけだよ」

三郎は平然と答えた。

「…何か悩み事があるなら相談に乗るから言ってみてよ。友達じゃない」

「お前ね、悩み事って…
俺が趣味と実益兼ねてやってるって発想はないの?男に尻触られて喜んでる変態かもしれないじゃん」

「そんな言い方止めろよ!
三郎は別にお金に困ってないし、第一、辛そうな顔してるじゃないか!」



「今日は行かせないから」

雷蔵は強い調子で言った。

「俺に説教でもするつもり?」

「とにかく、絶対行かせない!」

雷蔵は構えた。

「おいおい、体術では俺に勝ったことないだろう?」

雷蔵は三郎に向かっていくと、急に身を低くして、三郎の足首を掴み、三郎を後ろに倒れさせた。
そのまま雷蔵は着物の裾をめくり、あろうことか、下着を取り去って、あらわになった性器をくわえ込んだ。

 三郎ははじめはびっくりしたが、慣れない行為に涙目になりながら、息苦しそうな雷蔵を見ていると、三郎は頬杖をついて呆れながら言った。

「お前ね…、何やってんの?」

 雷蔵のぎこちない口淫はとても気持ちいいなんてものではなかったが、ただ、必死にしゃぶりついている様子に嗜虐心が刺激された。
 股間に頭を埋めた雷蔵の前髪を掴んで顔をあげさせる。
 目尻には涙がにじみ、飲みきれなかった白濁液が口の端から零れた。

「だから、行かせないって…」

「上等じゃねぇか。
…後悔するぜ」


 三郎は乱暴に雷蔵の身体を床に投げ出し、その横に刀をつきたてた。
 刀は雷蔵の黄色い髪を一房落とし、床に突き刺さって垂直に立った。
 雷蔵の両手首を頭の上で絡めて床に押さえ付けた。


 三郎は快楽なんか感じない方法で雷蔵を犯した。

 それは、雷蔵に対する予防線であった。これ以上三郎が自分に関わろうとしなければ、これ以上傷つけなくて済む。

 雷蔵は月明りに青白く光る刀を見ながら、必死で痛みと恐怖に耐えていた。
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