土井利
□土井半助、5才
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ある日、きり丸は利吉に呼び出された。
「利吉さん、一体なんなんですか〜?急に用があるって」
「きり丸君に頼みたいことがあるんだ」
「え〜俺だって暇じゃないんですから」
きり丸は頭の後ろで腕組みをして文句を言う。
「ただでとは言ってない」
「それを早く言って下さいよぉ〜」
きり丸が目を銭にしている。
「例の壷を手に入れてきて欲しい」
「壷ォ?まさか、この間のことま〜だ根に持ってたんですか?」
「だって私ばっかり勝手に子供の頃見られて、ずるいと思わないかい?」
きり丸は黙って利吉を見つめている。
「報酬ははずもう」
「さ〜すが売れっ子忍者の利吉さん!そういうことでしたらぁ」
例の壷とはアラジンの魔法のランプのように願いを叶えてくれる壷のことで、この間利吉はこれで5才の子供にされたのだ。
きり丸は質屋に売り払った壷をすぐに取り戻して来た。
「さて、これで壷は手に入ったが、土井先生は警戒心が強いから、私やきり丸君が持って行くのは良くないと思うんだ」
「じゃあどうするんっすかぁ〜?」
「警戒されずに済む適任がいるじゃないか」
それは、他でもない山田先生のことだ。
「なんだ利吉、そのにこにこ顔は?」
「父上に折り入ってお願いが」
「お前が私に頼み?」
山田先生は訝し気な顔をする。
「またぁ〜、山田先生、利吉さんに頼りにしてもらってうれしいくせに〜
…い”でっっ」
「父上っ!ありがとうございますっ」
というような経緯で、山田・土井の職員室に壷が難無く運び込まれ、授業を終えて帰室した土井先生を不思議な煙りが襲い5才の土井先生があらわれた。
くりくりとした大きな瞳、意思の強そうな眉、栗色の髪…
確かに5才の土井先生だ。
「ここは?」
「お友達がたくさんいる学校だよ」
「ふ〜ん」
5才の土井先生はあたりをきょろきょろと見回している。
「5才の土井先生、なかなかかわいいっスね」
「私、子供の土井先生にしたかったことがあったんですっ」
利吉は5才の土井先生の手を引いて、食堂に急ぐ。
「これ何?」
お皿には大小さまざまな練り物
「これはねっ、とっても栄養があっておいしい食べ物だよ!」
「利吉さん、必死ですね」
きり丸がつぶやく
「こういうことは、早い内からの刷り込みが大切なんだ」
「うぇ…、まずい…」
5才の土井先生は涙目になって訴える。
「…やっぱり駄目だったか」
がっくり肩を落とす利吉
「練り物嫌いを直す作戦は失敗ですね」
1年は組の子供達が群がってきた。
「わ〜5才の土井先生だぁ」
「5才の土井先生と遊びたぁ〜いっ」
「みんな!ちょっと待て」
いつものように学級委員長の庄左衛門が冷静に分析をはじめた。
「この間の利吉さんのときを考えてみろ。この壷の魔法はそんなに長持ちしないぞ。何をして遊ぶかちゃんと計画をたてるんだ!」
「お〜!」
「5才の土井先生の似顔絵が書きた〜い!」と乱太郎
「5才の土井先生とおいしいもの食べた〜い!」としんべエ
「馬に乗る!」と団蔵
「剣術!」と金吾
「やっぱからくりでしょう!」と兵太夫
「なめくじさんとおさんぽ!」と喜三太
(以下、略)
「よーし!鬼ごっこだぁ〜!」
5才の土井先生は1年は組と一緒に走って行った。
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