土井利

□腕枕
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今宵は学園長の祝いで酒宴が催された。忍術学園の教師達がほとんどだが、山田先生の息子ということで身内のようなものである利吉も招かれた。

といっても利吉は酒席でそれほど嗜むほうではない。酒よりも食事に箸をのばしながら、他の教師達の自慢話に相槌を打っていた。席はちょうど対角線上、半助に背を向けて座っている。皆がいる前で話すこともないが、これでは全く隙がない。

利吉はにこにことたわいもない話しの相手をしている。利吉のおかげで半助の心中は穏やかでないというのに、平然としている。

普段はそんなに酒を飲まないのに、不在の父の名代ということで、飲まされていた。
利吉は酒で陽気になるのでもなく、泣き上戸になるでもなく、単に眠たくなるらしく、寝てしまった。

「土井先生、利吉君寝ちゃいましたよ」
「も〜、まだ若いんだからそんなに飲ませちゃだめでしょう」

利吉の肩を抱いて部屋に向かう。半助は千載一遇のチャンスに胸がどきどきしていた。

しかし、部屋に向かっている間も、布団に寝かせても、利吉が起きる気配はない。

…こっちは寝れないぞ〜

恨みがましく寝顔を睨んでみても、すやすやと幸せそうな顔で寝ている。

まぁ、しょうがないか。

「じゃあおやすみ」
諦めて、隣の布団に入る前に、利吉の布団をぽん、とたたいた。

「わっ」
利吉は半助の腕をそのままかかえこみ、腕枕にしてしまった。

起きてる?
…いや起きてないね。

あいかわらず、利吉は寝ている。

…この体制でどうやって寝ろというのか…

腕を枕に取られたためしょうがないのでそのまま添い寝することにした。 腕から温かさが伝わってくる。すやすやと規則ただしい寝息をたてている。

これ以上、望んじゃばちがあたるよな…半助もいつしか眠りに落ちた。
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