土井利

□利子ちゃんと半子ちゃん
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「なんでいっつも私ばかりなんですか」

昼下がりの学園の庭で、利吉が土井に不平を訴えている。
「まあまあ、だって利子ちゃんのほうがかわいいからしょうがないじゃないか」
「半子ちゃんだってかわいいと思いますけど」

「とにかく、今度は利子にはなりませんから、半子ちゃんじゃなかったら、そのまま帰りますよ」
そう宣言して、利吉は帰っていった。
もちろん仕事の打ち合わせなどではなく、二人のデート事情によるものだった。

半助が利吉に迫っても、昼間は嫌とか学園では嫌とかいれいろなことを言って拒否されるので、いわゆる逢い引き用の宿をたまに利用しているのだが、まさか男二人ではいるわけにいかない。そこでどちらかが女装するのだが、それが利吉ばかりだという不満であった。

利吉は待ち合わせの茶屋にいつもの小袖姿で向かった。もちろん女装はせずに。
さて、先生はどんなかっこしてくるかな?
茶屋ののれんをくぐると、

いた!半子ちゃんだ!しかもあんみつを食べている。
「お嬢さん、おとなりよろしいですか?」
「どうぞ

嫌いな女装をさせられてどんなに不機嫌な顔をしているかと思えば、顔をあげた半子ちゃんは意外ににこにこ。

「どうしたんですか?女装お嫌いなのに、ノリノリじゃないですか?」
「せっかくだから普段食べられない甘いものとか食べようと思って
「あ、いいなあ。私も食べよっと。 おばちゃん、あんみつもう一つ下さい」

二人であんみつデート。傍からみると若いカップルのデートにしか見えない。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか」
「ええ」

内股で利吉の半歩後から着いてくる。いつもは女装しててもつい大股になったりして、女らしい振る舞いをするのを手抜きするのに。

本当に今日の半子ちゃんはのりのりだなぁ。
利吉は楽しくなってきた。

宿の部屋に通された。半子ちゃんはまだかわいらしくちょこんと正座して恥ずかしそうにしている。
「半子ちゃんかわいいなぁ、このまま襲っちゃおうかな
「あ〜れ〜」
正座の半子ちゃんの唇を奪いながら押し倒そうとしたその時、

「隙ありっ 」
「えっ、ちょっと… わーっ
半子ちゃん!何するんですか!」

「半子ちゃんが貞操の危機を感じたから」
「だからって、なんで後ろ手まで縛るんですか」
「残念だったね利吉君。もう半子ちゃんは終わり」

さっさと半子ちゃんの着物を脱ぎ捨てる。
「あ〜あ、かわいかったのにもったいない…」
「かわいいのは君だって」

そののち、仲良く交代で女装するようになったか、やはり利吉ばかりかは誰も知らない。

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