土井利

□姫行列
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「乱太郎、きり丸、しんべえ」
茂みから呼ぶ声が聞こえる。
「あれ?利吉さ〜ん」と、乱太郎
「なんでこんな所に隠れているんですか」と、しんべえ
「学園長に話しがある。取りついでくれ」
「なんかこんなこと前にもありませんでしたっけ?」と、きり丸
ところ変わって学園長の部屋「さる城から姫御世が同盟のために輿入れする道中の代わり身を依頼されまして、ということで、ご協力をお願いたいのです。山田先生と土井先生以外に」
「なんかこんなこと前にもなかったか」
「まあいい。父である山田先生がいやだというのはわかった。なぜ土井先生までだめなんだ?」
「…それは」
だめだ、言えない…−下手に喜ばせてしまうからなんて!…−
「今1年は組以外の先生は皆忙しいのじゃ! 土井先生が嫌なら山田先生に行ってもらうぞ」
「それは困ります。父なら自分が姫役をやるなんていいかねません」
「じゃろう。 土井先生と行くのじゃ」
利吉はがっくりと肩を落とした。
「さあ!行こうか、利吉君!」
…やっぱり、テンションが上がっている…
「いっときますけど、仕事ですからね」
「何を言ってるんだ!当たり前じゃないかぁ〜」



出発地点は京の宮家。夜半の内に入っておく。本物の姫御世は男装に身をやつし、用心棒と乳母と徒歩で朝早く出立した。
利吉は化粧を施し、姫の錦糸の小袖を身にまとう。その美しさは源義経を虜にした静御前もかくやと思われるほどだった。
「利吉君!きれいだよ」
あ〜あ、目をうるませている…
「利吉じゃありません」
「じゃあ、姫〜」
「仕事しましょう。行きますよ」

偽物の姫行列は目立つように正午前に屋敷の前から籠に乗って出立。籠持と乳母と用心棒の半介。見送りの父母。
「父上、母上、行って参ります」
「うむ、気を付けて」
「くれぐれも身体を大事に」
本物の娘ではないが、娘を心配する気持ちは本物だ。他人の家ながら親心が伝わってきて、しんみりしてきた。

「半助、参るぞ」
「はい!」
…だめだ、完全に喜ばせてしまっている…

道中は常にこの政略結婚を阻止しようとする輩から狙われて危険なのだが、輿に揺られて暇そのもの。姫用の輿は少し小さく、窓から外の様子が伺うことができる。用心棒に粉した半助は、辺りに注意しながら歩いている。

「来ましたよ」
「わかってる」
さっそく刺客が三人現れた。
「姫の輿をあちらへ」
え?お姫様扱いかよ?…そりゃそうだ、姫役してるんだから… 安全な場所の輿の窓から半助が刺客を片付けるのを見学するよりなかった。

…だからこの仕事は土井先生と組みたくなかったのに! ただでさえいつも土井先生は守ってくれる。それに甘えるのが嫌で、ちょっとでもいいから一人前になって認めてもらいたいのに…
「姫、ご無事でしたか」
完全に利吉はむくれている。
「ありがとう。礼を言うぞ」
対して、半助は軽い倒錯劇と軽いS調の利吉のセリフに完全に楽しんでいた。
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