雑伊、仙伊、etc
□月
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日が落ちて夜の戸張が落ちると、忍術学園の昼間の喧騒は嘘のように静寂が訪れる。
−立待ち月−
保健室の窓に立ち、東の空を覗くと、月が出ている。
血のように真っ赤で、大きな月
あの人の眼から光が失われたときも、こんなふうに月が見えたのだろうか?
伊作は思いを馳せながら、東の空から上がったばかりの月を見ていた。
まぁるい月
今夜は満月
こんな早い時間にまだ来るはずないよな…
約束をしている訳ではないが、綺麗な満月の晩には雑渡が訪れることが多い。
ついでだから仕上げてしまいたい薬、煎じちゃお
伊作は、薬棚から数種類の薬草を取りだして薬研に入れた。
−居待ち月−
がりごり、がりごり
ふぅ、ちょっと疲れた
伊作は手を止めて、座したまま窓を見上げた。
あ、月、白くなった。
月は、いつの間にか、座ったままでも見える位置までゆるゆると上がっていた。
そろそろ来てもいい頃だけど…
伊作は細かく砕いた薬草を煎じるために火にかけた。
−寝待ち月−
こぽこぽ、こぽこぽ
煎じるのを待っている間、伊作は床に横になっていた。
元々約束している訳じゃないし、今夜はもう来ないかな?
月、きれーい。もうこんな所から見えるようになった。
月は空の一番高い所、寝たままでも窓から見える位置にまで上がった。
せっかく綺麗な満月なのに… 一人で期待しちゃってバカみたいだ…
伊作はそのままふてて寝てしまった。
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